Fuseji伏字 ダウンロード

情報公開で事業者が出した書類の法人情報をどこまで伏せるか — 第 5 条第 2 号と意見書の機会

先に結論

国の行政機関には、入札や企画提案、許認可の申請などで、事業者が作った書類がたくさん集まります。こうした書類に情報公開請求(行政文書の開示請求)が届くと、担当者は、会社の情報をどこまで出してよいかで迷います。このページは、行政機関情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)の第 5 条第 2 号と第 13 条を中心に、厚生労働省と国土交通省の審査基準の言葉で、考える順番を並べます。

  • 第 2 号は、法人などに関する情報のうち 2 つの型を不開示情報にしている:公にすると法人の権利・競争上の地位・正当な利益を害するおそれがあるもの(イ)と、行政機関の要請を受けて公にしないとの条件で任意に出されたもの(ロ)です
  • 「おそれ」には蓋然性が求められる:審査基準は、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる、と書いています。会社の書類だから一律に伏せる、という読み方はされていません
  • 人の生命・健康などを守るために公にすることが必要な情報は除かれる(第 2 号ただし書)
  • 書類を出した事業者に、意見書を出す機会を与える決まりがある(第 13 条)

どの部分が第 2 号に当たるかは、開示する機関が書類ごとに判断します。このページは判断の代わりにはなりません。迷うときは、機関の審査基準を確かめ、担当部署や専門家に確認してください。個人の情報(第 1 号)と部分開示の決まり(第 6 条)は 情報公開請求で部分開示するときの黒塗り にまとめています。このページは第 2 号に絞ります。

第 2 号が扱う「法人等に関する情報」

法人等には、民間の法人のほか団体も含まれる

法第 5 条第 2 号は、「法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報」を対象にしています。

厚労省の審査基準(不開示情報に関する判断基準・別添 2)は、法人等には、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人、法人ではないが権利能力なき社団なども含まれる、と書いています。一方で、条文の括弧書きのとおり、国・独立行政法人等・地方公共団体・地方独立行政法人はこの号から除かれていて、その事務や事業に関する不開示情報は、第 6 号などで扱います。

行政側の契約の情報は第 6 号で考える

入札の書類には、事業者の情報と行政側の情報の両方が載っています。国土交通省の審査基準は、契約に関する事務の情報について、たとえば「入札予定価格等を公にすることにより、公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれるもの」があるとし、これを第 6 号ロの説明の中で挙げています。同じ入札の書類でも、事業者の側の情報(第 2 号)と、行政側の契約の情報(第 6 号)とでは、見る号が違います。

社員の名前は、第 1 号でも検討する

国交省の審査基準は、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもあり、「法第5条第1号の不開示情報に当たるかどうかも検討する必要がある。」と書いています。提案書に載った担当者や技術者の名前・経歴は、第 2 号と第 1 号の両方の目で見ることになります。

個人事業主の事業の情報も、この号で見る

第 2 号には「事業を営む個人の当該事業に関する情報」も入っています。厚労省の審査基準は、これは事業に関する情報なので、法人等に関する情報と同様の要件で、事業を営む上での正当な利益等について判断することが適当だから本号で規定している、と説明しています。第 1 号の個人に関する情報からは、同じ理由で除かれています。

イ:権利・競争上の地位・正当な利益を害するおそれ

3 つの言葉の意味

第 2 号イは、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」です。厚労省の審査基準は、それぞれを次のように説明しています。

  • 権利:信教の自由、集会又は結社の自由、学問の自由、財産権等法的保護に値する権利一切
  • 競争上の地位:法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位
  • その他正当な利益:「ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含むものである。」

「おそれ」は、法人の性格や行政との関係も見て判断する

害するおそれがあるかどうかは、法人等にはさまざまな種類・性格のものがあるので、その性格や権利利益の内容・性質などに応じ、憲法上の権利の保護の必要性や、行政との関係などを十分考慮して判断する、とされています。そのうえで審査基準は、「この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。」と書いています。

提案書や申請書のどの記載が「ノウハウ」や「競争上の地位」に関わるかは、書類の中身と事業者の事情によって変わります。条文と審査基準が示しているのは判断の物差しで、「この欄は伏せる」という一覧ではありません。

ロ:公にしないとの条件で任意に提供された情報

行政機関の要請を受けて、条件付きで出されたもの

第 2 号ロは、「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」であって、法人等や個人における通例として公にしないこととされているものなど、条件を付けることが情報の性質や当時の状況に照らして合理的と認められるものです。厚労省の審査基準は、この規定の趣旨を、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護しようとするもの、と説明しています。

法令に基づく提出は「要請」に含まれない

審査基準は、「「要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれない」と書いています。ただし、行政機関の長が報告を求める権限を持っていても、その権限を使わずに任意に提出を求めた場合は含まれる、としています。また、行政機関の要請を受けずに事業者から出された情報は、原則として含まれません(事業者の側から先に非公開の条件が示され、行政機関が合理的理由があるとして受け入れたうえで提供を受けた場合は含まれ得る、とも書いています)。

申請書のように法令の手続きで出された書類と、行政機関が任意で頼んで出してもらった資料とでは、ロの当てはまり方が違う、ということです。

「通例」は業界での扱い

審査基準は、「「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等において公にしていないことだけでは足りない。」と書いています。さらに、公にしないとの条件が付いていても、現にその情報が公にされている場合はロに当たらない、としています。事業者のウェブサイトやパンフレットにすでに載っている内容は、条件付きで受け取った書類の中にあっても、この理由では伏せられません。

ただし書:人の生命・健康などを守るために公にする情報

第 2 号には、「ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。」というただし書があります。厚労省の審査基準は、公にすることで守られる人の生命・健康などの利益と、公にしないことで守られる法人等の権利利益とを比べて、前者を守る必要が上回るときは開示しなければならない、という趣旨だと説明しています。

また、現実に被害が起きている場合に限らず、将来侵害される蓋然性が高い場合も含まれ、事業活動と被害との明確な因果関係が確認されなくても、被害の発生が予想される場合もあり得る、と書いています。安全や健康に関わる事業者の情報は、第 2 号イやロに当たりそうに見えても、ただし書の検討が残ります。

事業者に意見書を出す機会(第 13 条)

出す機会を与えることができる・与えなければならない

法第 13 条第 1 項は、開示請求に係る行政文書に第三者に関する情報が記録されているとき、行政機関の長は、開示決定等をするに当たって、その第三者に、行政文書の表示などを通知して「意見書を提出する機会を与えることができる。」と定めています。行政文書の表示のほかに通知する事項は、施行令 第 7 条が、開示請求の年月日、行政文書に記録されている第三者に関する情報の内容、意見書の提出先と提出期限、と定めています。

第 2 項は、第三者に関する情報が第 5 条第 1 号ロや第 2 号ただし書に当たると認めて開示しようとするときと、第 7 条(公益上の理由による裁量的開示)で開示しようとするときは、開示決定に先立って、書面で通知して意見書を出す機会を与えなければならない、と定めています(第三者の所在が判明しない場合を除く)。

反対の意見書が出たとき

第 3 項は、意見書を出す機会を与えられた第三者が開示に反対の意思を示した意見書を出した場合に開示決定をするときは、「開示決定の日と開示を実施する日との間に少なくとも二週間を置かなければならない。」と定めています。行政機関の長は、開示決定の後ただちに、その第三者に、開示決定をしたこととその理由、開示を実施する日を書面で通知します。

事業者の意見は判断の材料の 1 つで、どこを開示するかを決めるのは行政機関の長です。意見書の様式や照会の進め方は、機関の規程を確かめてください。

事業者の書類を黒塗りするときの作業

見落としやすいところ

  • 表紙や本文以外:提案書のヘッダー・フッター、添付の会社案内、図表の中の注記にも、会社名や担当者名が入っていることがあります
  • 第 1 号と重なる記載:担当者・技術者の氏名、経歴、連絡先は、第 2 号とは別に第 1 号の目でも見ます
  • すでに公になっている記載:伏せる前に、事業者が公表している内容かどうかを確かめます(第 2 号ロに当たらない理由になり得ます)
  • 行政側の情報:予定価格など行政側の契約の情報は、第 2 号ではなく第 6 号の目で見ます

PDF で渡すなら、下の文字ごと消す

事業者から受け取った提案書の PDF に文字の層があると、上に黒い四角を重ねただけでは、下の文字がファイルの中に残ります。文字を選んでコピーすると、伏せたはずの会社名や数字が読めてしまいます。電子データで開示するときは、下の文字ごと消す(焼き込み)方式で除き、PDF の作者・タイトルなどの文書情報や、しおり・添付ファイルも確かめてください。失敗の型と見分け方は 黒塗りが「見える」「剥がせる」原因と、渡す前の確かめ方 に、渡す前の確かめ方は 剥がしテスト(無料)にあります。

Fuseji で除く場合

Fuseji(伏字)は、日本語の PDF から氏名・住所・電話番号・会社名などを候補として示し、選んだ部分を下の文字ごと焼き込むアプリです。プロ版・事務所版では、行政機関情報公開法 第 5 条の各号を墨消しの理由として最初から選べます。氏名・住所などには第 1 号、会社名などには第 2 号が自動で入り、各号から選び直すこともできます。理由は「法5条1号」のように黒塗りの中に白い文字で入れて焼き込め、検証レポートにも残ります。

検出は「候補の提示」で、漏れがないことを保証するものではありません。提案書のノウハウに当たる記述のように、会社名や番号の形をしていない部分は、担当の方が読んで範囲を選んでください。どこを除くか、どの号に当たるかを決めるのは、Fuseji ではなく開示する機関です。情報公開の担当の方向けの説明は 開示請求に対応する方へ にあります。

このページは、参考に挙げた法令・審査基準の要点を整理したものです。審査基準は機関ごとに定められています。地方公共団体の情報公開は、それぞれの情報公開条例によります。個別の請求で何を除くか、どの号に当たるかは、機関の審査基準を確かめ、担当部署や専門家に確認してください。価格は 価格 にあります。

参考