黒塗りした PDF の文字が見えてしまう原因と、渡す前の確かめ方
先に結論
PDF の黒塗りが「剥がせる」原因はほぼ 5 つの型に分けられます。黒い四角を重ねただけ/見えない文字/文書情報と注釈/編集前の版/スキャン画像の下の層の 5 つです。原因が分かれば、確かめ方も対処もはっきりします。「その PDF、本当に消えていますか?」と問われたとき、毎回同じ手順で確認できるようになります。
このページでは、失敗の型→見分け方→対処の順で説明します。意図的に特定の団体名や事件名は挙げません。一般論として整理しています。
よくある失敗の型
黒い四角を重ねただけ(塗りの下の文字)
これが最も多い失敗です。Word・Pages・プレビューの図形、注釈としてのシェイプ、ソフトウェアの「蛍光ペン」を黒く塗っただけのケースがここに含まれます。見た目には消えていても、PDF 内部の文字そのものが残っているため、コピー・検索・四角のドラッグ移動で簡単に読めます。
見えない文字(白文字・極小文字・ページ外)
隠すつもりが透けて見えるわけではない、見えない文字です。白文字(白い文字で本文と同じ場所に置いて、四角で隠したように見せかける)はコピーや検索には出てきますが、画面では見えません。極小文字(0.5pt などのサイズ)は拡大すると読めます。ページの座標の外に置かれた文字(印刷範囲の外など)は、画面には出ませんが、コピーや文字の抜き出しでは出てくることがあり、見落とされます。
文書情報・注釈・添付ファイル・しおり
PDF には、本文以外にもレイヤーとは別の情報が含まれます。文書のプロパティ(作成者・タイトル・件名)、コメント/注釈、添付ファイル、しおり、フォームの初期値です。これらは「黒塗り」とは別のレイヤーで格納されるので、図形で隠したつもりでもプロパティ画面や PDF ビューアの別タブからは読めます。
編集前の版の履歴(増分保存)
PDF には仕様上、編集した差分(増分)がそのまま残ることがあります。Acrobat や Word 経由で何度も保存し直した PDF では、過去の版に含まれていたはずの文字列がファイルの後ろの方にそのまま残っていることがあります。「保存」を重ねるたびに増えるため、見た目には新しい版でも、消す前の名前・住所が復元できるケースがあります。
スキャン画像の上に文字の層(OCR)
紙をスキャンして作った PDF を、OCR(文字認識)で検索可能にすると、スキャン画像の上に透明な文字の層が載ります。この層にもとの紙に書かれた文字列がすべて入っており、見た目には画像になっていても、層の文字が読めてしまうことがあります。スキャンした書類を OCR したあとに「黒く塗った」場合は特に注意が必要です。
手元で確かめる手順
Acrobat などの専用ツールがなくても、次の手順で多くの失敗を検出できます。Mac のプレビューでも確認可能です。
- 全選択してコピー。⌘A で全選択 → ⌘C でコピー → テキストエディタに貼り付け。塗りの下に隠れていた文字列が出てこないかを確認します。
- 検索。⌘F で、消したはずの氏名・住所・電話番号・口座・マイナンバーなどを検索。ヒットすれば、文字はまだ残っています。
- プロパティを確認。「ファイル」→「プロパティ」(または ⌘+Opt+P)で作成者・タイトル・件名・キーワードを開きます。ここに余計な文字列が残っていないかを見ます。
- しおりと添付ファイルを確認。サイドバーの「しおり」「添付ファイル」が空であることを確かめます(残っているなら、削除してから保存し直します)。
- 黒い四角を選んで動かす・削除する。黒い四角をクリックして選択し、ドラッグで動かしたり削除したりしてみます。下の文字が見えれば、その黒塗りは図形を重ねただけです。
この手順は 5 分程度で終わります。ただし手順 1〜2 は 文字の層 の漏れしか拾えません。文書情報(手順 3)・しおりと添付(手順 4)・編集前の版(手順 5 でも拾えないことがある)は、別の手順で見る必要があります。手順を一つずつ「自分の指で」踏むことが、見落としを減らすうえで大切なのは確かです。
実際に起きていること
公開された資料から、黒塗りの下の情報が読み取れた事故は、国内外で報じられています。共通して起きているのは「黒い四角を重ねただけ」のケースで、公的資料に加え、企業や団体の Web サイトで公開された資料でも同種の指摘が繰り返し出てきました。
事故のパターンは次の 3 つに整理できます。
- Word や PowerPoint の「黒い図形」で隠していた(PDF に変換したあとも文字が残っていた)
- PDF のプロパティ(作成者名・テンプレートのタイトル)に、消したい文字列が入っていた
- 墨消し機能を持つソフトを使い、「適用」を押さないまま保存した
意図的に特定の組織名や事件名を挙げることは避けていますが、どの事故でも、原因としては上の「よくある 5 つの型」のどれかに当てはまると整理できます。特別な事情ではなく、確認手順を踏めば防げる種類の事故です。
どんなときに確かめるか
「自分が一から焼いて出す側」と「他人が焼いた PDF を受け取って確認する側」、両方の場面があります。
自分が渡す前に
焼いたあとは、上の 5 手順を自分の手元で通します。自分が黒塗りのしかたを知っていて、複数人で作業しているなら、焼く人と確認する人を分けるとさらに安全です。「手順 1〜5 を踏んで何も出なかった」という記録を、ページ単位のチェックリストとして残しておくと、後から「あのとき何を確かめた?」と聞かれても答えやすくなります。
受け取った PDF を確かめるとき
情報公開請求や開示請求で取得した文書、取引先から届いた資料、採用応募書類、自治体・学校・病院からのお知らせ、官公庁の公表資料。受け取った側でも、上述の 5 手順は有効です。もし消し漏れを見つけたら、送り主に知らせて再送してもらうのが、受け取った側のいちばん確実な対応です。
見つかったらどうするか
上の 5 手順で黒い四角の下の文字が出てきたり、プロパティやしおり・添付ファイルに文字列が残っていた場合は、元のファイルから下の文字をまとめて消すやり方でやり直すのが基本です。PDF を黒塗り(墨消し)する正しい方法 で整理したとおり、方法は (a) 専用機能で文字そのものを削除する(Acrobat Pro の墨消し機能)と、(b) ページ画像として作り直す(焼き込み。Fuseji、印刷→スキャン)の 2 つです。すでに黒塗りされた PDF の上から新しく四角を重ねても、同じ種類の失敗を重ねるだけです。
枚数が多く一括で焼きたい場合は、Mac で動かしている Fuseji の「剥がしテスト」で一度検査したのちに、Fuseji で焼き直して検証レポート付きで保存するのが手軽です。剥がしテストは Fuseji に入っている機能で、Mac のなかで完結する検査です。アカウントや登録、カードも要りません。詳しくは 剥がしテスト をどうぞ。
外部に送る前の確かめと、受け取った側の確かめの両方を習慣にすると、こうした型の事故はかなり減らせます。手順を一度覚えてしまえば、以後は 5 分で終わる日課です。
このページは個別の事件の摘発や評価を目的とはしていません。事故の整理は読者の方が自分でも確かめられるようにするためです。仕様の解釈で版により変わる点がある場合は、公式の説明を確認するようにしてください。