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相続の書類の控え・コピーを他の相続人や登記所に出すとき

先に結論

相続の手続きでは、同じ書類の控えやコピーが、いくつもの人の手元に渡ります。このページでは、次の 3 つの場面に分けて、根拠と隠す範囲を整理します。

  • 相続税の申告書の控え:国税庁の FAQ は、申告をする人以外のマイナンバーをマスキングするよう案内しています。
  • 登記に出す書類のコピー:原本還付では、原本は返ってきて、原本証明をしたコピーが法務局に残ります。このコピーについて、登記に無関係な部分を黒塗りして出している司法書士の事務所があります。一方で、原本そのものを加工することはできません。
  • ほかの相続人に見せる資料:弁護士の事務所の解説は、協議に必要な情報は示しつつ、不要な個人情報は黒塗りし、「第三者の個人情報部分をマスキングしています」と説明することを勧めています。

税理士・司法書士・弁護士の事務所が、相続人とのやり取りで書類を扱う場面を想定しています。どの場面でも、隠したあとに下の文字が残っていないかを確かめるところまでが作業です。

相続税の申告書の控えを保管するとき

相続税の申告書には、相続人のマイナンバーを書く欄があります。申告が終わると手元には申告書の控えが残りますが、相続人が複数いると、控えにはほかの相続人の番号も載ったままになります。

国税庁の FAQ の案内

相続税の申告書の控えについて、国税庁の「相続税・贈与税に関する FAQ」は、「他の相続人等のマイナンバー(個人番号)が記載された状態で相続税の申告書の控えを保管することはできません。」「相続税の申告をする方以外の方のマイナンバー(個人番号)をマスキングするなどの対応をお願いします。」と案内しています。

控えを作るときの作業

控えを作るときは、マイナンバーの欄ごとに、申告をする本人の番号か、それ以外の人の番号かを見分けて、本人以外の番号をマスキングします。見分けずに控えを丸ごと保管すると、FAQ が「保管することはできません」としている状態のままになります。

登記に出す書類のコピー

相続登記を法務局に申請するときは、遺産分割協議書・遺産分割調停調書・遺言書などを登記原因証明情報として添付します。これらの原本を手元に返してもらう手続きが原本還付です。

法務局に残るのはコピーの方

原本還付では、原本は申請した人に返ってきて、原本証明をしたコピーが法務局に残ります。つまり、法務局の手元に置かれるのはコピーの方で、そのコピーには、何もしなければ原本と同じことがすべて書かれています。

登記に無関係な部分を隠して出している事務所の例

渡辺和也司法書士事務所は、「当事務所では、…遺産分割調停調書や遺言の場合には、原本証明をした謄本の方は、登記に無関係な部分を黒塗り(マスキング)して見えないように提出するようにしています。」と解説しています。これは1 つの事務所のやり方です。同じようにするかどうかは、依頼している司法書士に相談してください。

原本は加工できない

司法書士なごやか法務事務所は、「原本還付するためのコピーにはマスキング(黒塗り)をしてもいいが、添付書類の原本にマスキングや加工することは不可とされているのです。」と解説しています。同じ記事には、原本を加工したことで「後日法務局から電話がかかってきて…補正の連絡がきました。」という経験も書かれています。原本はそのまま出し、隠すのはコピーの方、という順番を取り違えないことが大切です。

ほかの相続人へ資料を見せる場面

遺産分割の協議では、通帳や取引履歴などの資料を相続人の間でやり取りします。参考に挙げた弁護士法人サリュの記事は、知らない兄弟姉妹に相続財産の資料をどこまで見せるかを扱っています。

資料に含まれる第三者の情報

記事は、「通帳や取引履歴には、被相続人以外の第三者名、病院名、施設名、家族の生活情報などが含まれることがあります。」と指摘しています。協議の相手に見せる前に、資料の中から次のものを探します。

  • 被相続人以外の第三者名
  • 病院名
  • 施設名
  • 家族の生活情報

必要な情報は示し、不要な個人情報は隠す

そのうえで記事は、「協議に必要な情報は示しつつ、不要な個人情報は黒塗りする、摘要欄の説明を別紙で行う、原本ではなく写しを送るなどの工夫を検討しましょう。」としています。資料を出さないのではなく、協議に要る部分は見せたまま、要らない個人情報だけを隠す、という考え方です。

何を隠したかを伝える

隠しすぎにも注意が要ります。記事は「ただし、黒塗りが多すぎると、相手はかえって不信感を持ちます。何を隠したのか分からない状態にするのではなく、『第三者の個人情報部分をマスキングしています』と説明することが大切です。」と書いています。黒塗りした資料を渡すときは、何を隠したのかを一言添えるところまでを 1 つの作業として考えてください。

相続の書類で起きている失敗

相続の書類に固有の失敗として根拠があるのは、上で触れた原本を加工してしまい、法務局から補正の連絡がきたという例です。隠してよいのはコピーの方で、原本は加工しない、という区別を、作業の最初に確かめておきます。

そのほかの失敗、たとえば黒い四角を重ねただけで下の文字が残っている、といった黒塗り一般の失敗の型は、黒塗りが「見える」「剥がせる」原因と、渡す前の確かめ方 で整理しています。相続の書類でも同じ型がそのまま起きうるので、渡す前の確かめ方はそちらを参照してください。

手順のまとめ

相続の書類を控え・コピーとして保管・提出・開示するときに、毎回通す手順です。

  1. 原本は加工しない:隠すのはコピーの方。原本にマスキングや加工をすると、法務局から補正の連絡がくることがあります(なごやか法務事務所の解説)
  2. 相続税の申告書の控えは、ほかの相続人の番号を隠す:申告をする本人以外のマイナンバーをマスキングします(国税庁の FAQ)
  3. 登記に出すコピーは、登記に無関係な部分を隠すことも考える:渡辺和也司法書士事務所のやり方として、原本証明をした謄本の登記に無関係な部分を黒塗りして出す例があります。依頼している司法書士と相談して決めます
  4. ほかの相続人に見せる資料は、第三者の情報を隠して説明を添える:被相続人以外の第三者名・病院名・施設名・家族の生活情報を隠し、「第三者の個人情報部分をマスキングしています」と添えます(弁護士法人サリュの解説)
  5. 摘要欄の説明は別紙で、送るのは原本ではなく写し:協議に必要な情報は示しつつ、こうした工夫を検討します(弁護士法人サリュの解説)
  6. 下の文字が残っていないかを確かめる:黒い四角を重ねただけでは、下の文字をコピーできることがあります。渡す前に、隠した場所の文字が選べたりコピーできたりしないかを確かめます。PDF なら 剥がしテスト で確かめられます

このページは、参考に挙げた国税庁の FAQ と、司法書士・弁護士の事務所の解説の要点を整理したものです。個別の場面の扱いは、提出先や顧問の税理士・司法書士・弁護士に確認してください。

参考