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自治体の情報公開で黒塗りするとき — 国の法律との違いと、条例で確かめるところ

先に結論

情報公開の黒塗りの解説は、国の行政機関情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)を前提に書かれたものが多くあります。けれども、市区町村や都道府県が持っている文書の情報公開は、その自治体の情報公開条例によります。このページは、自治体の担当者や、自治体から書類の開示を受ける方に向けて、国の法律との違いと、確かめる場所を並べます。

  • 国の法律は、自治体に努力を求めているだけ:行政機関情報公開法 第 25 条は、地方公共団体に、法律の趣旨にのっとって情報の公開に関する施策を策定し実施するよう努めなければならない、と定めています。中身は各自治体の条例です
  • 本人の個人情報の開示請求は、別の仕組み:2023 年 4 月 1 日から、地方公共団体の機関にも個人情報保護法の規律が適用されています
  • 条例の条文は、国の法律と同じとは限らない:たとえば東京都情報公開条例は、不開示情報の号の番号、法人の情報の書き方、決定の期限が国の法律と違います

この記事で例に出す条例は、原文を確かめた東京都情報公開条例だけです。ほかの自治体の条例が同じ書き方とは限りません。実際の判断は、その自治体の条例・規則・運用の基準を確かめ、担当部署や専門家に確認してください。

国の法律は、自治体の情報公開を直接は決めていない

第 25 条は努力義務

行政機関情報公開法の開示請求の決まりは、国の行政機関が持つ行政文書についてのものです。地方公共団体については、第 25 条が次のように定めています。

「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」

国の法律の第 5 条(不開示情報)や第 6 条(部分開示)の条文が、そのまま市役所の文書に当てはまるわけではありません。市役所や県庁の文書の開示は、それぞれの自治体が定めた条例の条文で決まります。

「情報公開条例」とは

個人情報保護法は、情報公開条例を「地方公共団体の機関又は地方独立行政法人の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める地方公共団体の条例」と定義しています(第 60 条第 3 項)。名前は自治体によって違い、東京都の場合は「東京都情報公開条例」です。

本人の個人情報の開示請求は、2023 年 4 月から個人情報保護法で

全国的な共通ルールになった

個人情報保護委員会は、令和 3 年の改正について、3 本の法律を 1 本の法律に統合するとともに、「地方公共団体の個人情報保護制度についても統合後の法律において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化する」等の措置を講ずるもの、と説明しています。地方公共団体に関する部分の施行日は、令和 5 年(2023 年)4 月 1 日です。

個人情報保護法は、「行政機関等」に地方公共団体の機関(議会を除く)を含めています(第 2 条第 11 項)。そのうえで第 76 条は、何人も、行政機関の長等に対し、その属する行政機関等が保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求できる、と定めています。自分の情報を見たい本人からの請求は、情報公開条例ではなく、この仕組みで扱われます。

条例との整合を取る決まりもある

個人情報保護法 第 78 条第 2 項は、地方公共団体の機関などについて、不開示情報の範囲を、情報公開条例との整合性を確保するために条例で調整できるように読み替えています。本人からの開示請求でも、自治体ごとの条例を見る場面が残っているということです。

本人からの開示請求に応じる場面の黒塗りと理由の示し方は、開示請求に応じるときの黒塗りと、不開示の理由の示し方 にまとめています。

東京都の条例で見る、国の法律との違い

ここからは、東京都の総務局が掲載している東京都情報公開条例の本文と、e-Gov の行政機関情報公開法を並べます。違いを示すための例で、ほかの自治体の条例がどちらと同じかは、その条例を見ないと分かりません。

呼び名と、請求できる人

国の法律は「行政機関の長」に「行政文書」の開示を請求する仕組みです。東京都の条例は「実施機関」に「公文書」の開示を請求する仕組みで、第 5 条は「何人も、実施機関に対して公文書の開示を請求することができる。」と定めています。実施機関には、知事、教育委員会、選挙管理委員会、警視総監、消防総監などが並んでいます(第 2 条)。都議会の公文書は、別の東京都議会情報公開条例の対象です(第 14 条第 4 項)。

不開示情報の号の番号が違う

東京都の条例 第 7 条の不開示情報は、国の法律 第 5 条と並び方が違います。

  • 第 1 号:法令や条例の定め、国の行政機関の指示等により、公にすることができないと認められる情報
  • 第 2 号:個人に関する情報(国の法律では第 5 条第 1 号)
  • 第 3 号:法人等に関する情報(国の法律では第 5 条第 2 号)
  • 第 7 号:実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で第三者が任意に提供した情報(国の法律では第 5 条第 2 号ロに置かれている型)
  • 第 8 号・第 9 号:番号利用法の特定個人情報と、死亡した者に係る個人番号

同じ「個人に関する情報」でも、国の法律なら「第 5 条第 1 号」、東京都の条例なら「第 7 条第 2 号」です。

法人の情報の書き方が違う

国の法律 第 5 条第 2 号イは、法人等の「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」です。東京都の条例 第 7 条第 3 号は、「競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められるもの」で、ただし書には、事業活動による危害から人の生命・健康を守るため、違法・不当な事業活動による支障から人の生活を守るため、消費生活その他都民の生活を守るため、公にすることが必要と認められる情報の 3 つが並んでいます。

一部開示の要件と、決定の期限が違う

国の法律 第 6 条第 1 項は、除いた残りに「有意の情報が記録されていない」ときを例外にしています。東京都の条例 第 8 条第 1 項は、不開示情報の部分を容易に区分して除くことができ、かつ、「区分して除くことにより当該開示請求の趣旨が損なわれることがないと認められるとき」に、残りを開示しなければならない、と定めています。

決定の期限は、国の法律 第 10 条が開示請求があった日から 30 日以内(30 日以内に限り延長できる)、東京都の条例 第 12 条が開示請求があった日から 14 日以内(やむを得ない理由があれば、開示請求があった日から 60 日を限度に延長できる)です。黒塗りの作業に使える日数が、国の機関と同じとは限りません。

第三者に意見書を出す機会は、似た形で置かれている

東京都の条例 第 15 条は、公文書に都以外のものに関する情報が記録されているとき、意見書を提出する機会を与えることができる、と定め、反対の意見書が出たうえで開示決定をするときは、開示決定の日と開示をする日との間に少なくとも 2 週間を置く、と定めています。国の法律 第 13 条と似た組み立てですが、通知する事項は「実施機関が定める事項」とされています。

黒塗りに添える理由は、その条例の号で書く

黒塗りした箇所に「法5条1号」のような不開示の理由を書き添える運用をとっている場合は、国の法律の号の番号をそのまま使わないように気をつけます。東京都の条例なら、個人に関する情報は第 7 条第 2 号、法人等に関する情報は第 7 条第 3 号です。国の法律の番号のまま書くと、通知や問い合わせへの対応で、どの規定を当てたのかが食い違います。

開示しない理由の示し方そのものも、条例に定めがあります。東京都の条例 第 13 条は、開示しないときは書面で理由を示さなければならない、とし、その理由の提示は、開示しないこととする根拠規定と、その規定を適用する根拠が、書面の記載自体から理解され得るものでなければならない、と書いています。書き方の様式は、各自治体の規則や規程を確かめてください。

どこで確かめるか

  1. 条例の本文:自治体の例規集(条例・規則の一覧)や、情報公開のページに載っています。東京都の場合は、総務局のサイトに情報公開条例の本文の PDF が載っています。附則の改正の履歴も見て、今の版かを確かめます
  2. 規則・規程:請求の方法や通知の書面の様式、意見書の照会で通知する事項などは、条例が規則や実施機関の規程に任せていることがあります(東京都の条例 第 6 条・第 15 条など)
  3. 判断の基準:国の行政機関は、開示決定等の審査基準を定めて公開しています(厚生労働省や国土交通省の例)。自分の自治体に同じような基準があるかを、情報公開の窓口で確かめます
  4. 議会・地方独立行政法人:議会の文書は別の条例になっていることがあります(東京都はそうです)。地方独立行政法人の扱いも条例の定義を見ます
  5. 本人からの請求か:自分の個人情報を見たい本人からの請求なら、個人情報保護法と、その自治体が定めた関係の条例を確かめます

PDF で開示するときの黒塗り

下の文字ごと消す

どの条例でも、不開示の部分が読めてしまっては部分開示になりません。PDF などの電子データのまま渡すときは、上に黒い四角を重ねただけだと、文字の層がある PDF では下の文字がファイルの中に残ります。下の文字ごと消す(焼き込み)方式で除き、PDF の作者・タイトルなどの文書情報や、しおり・添付ファイルも確かめてください。除き方の考え方は 情報公開請求で部分開示するときの黒塗り(国の法律と厚生労働省の審査基準の言葉)に、渡す前の確かめ方は 剥がしテスト(無料)にあります。

Fuseji で除く場合

Fuseji(伏字)は、日本語の PDF と画像から氏名・住所・電話番号などの個人情報を候補として示し、選んだ部分を下の文字ごと焼き込むアプリです。プロ版・事務所版の墨消し理由では、行政機関情報公開法 第 5 条の各号を最初から選べるほか、自治体の情報公開条例など、自分の使う条項を、短い表記(例: 「条例5条1号」)と正式な表記(例: 「○○市情報公開条例 第5条第1号」)で登録できます。登録した条項は、以後のすべての案件で候補に出ます。理由は黒塗りの中に白い文字で入れて焼き込め、検証レポートにも残ります。

検出は「候補の提示」で、漏れがないことを保証するものではありません。最終的な確認は画面で行ってください。どこを除くか、どの号に当たるかを決めるのは、Fuseji ではなく開示する実施機関です。情報公開の担当の方向けの説明は 開示請求に対応する方へ にあります。

このページは、参考に挙げた法令・条例・資料の要点を整理したものです。東京都情報公開条例は、条文の違いを示すための例です。ほかの自治体の情報公開条例は、それぞれの原文を確かめてください。個別の請求で何を除くか、どの規定に当たるかは、担当部署や専門家に確認してください。価格は 価格 にあります。

参考