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開示請求に応じるときの黒塗りと、不開示の理由の示し方

先に結論

本人から「自分の情報を見せてほしい」と請求されたとき、渡す記録にほかの人の情報が混ざっていることがあります。このページでは、次の 2 つの場面を扱います。

  • 事業者が、従業員や顧客など本人からの開示請求に応じる場面:個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、本人または第三者の権利利益を害するおそれがある場合などに、「その全部又は一部を開示しないことができる」と書いています。開示しないときは、理由を説明するよう努めることも書かれています。
  • 行政機関等が、保有個人情報の開示請求に応じる場面:同じ委員会のガイドライン(行政機関等編)は、開示請求者以外の個人に関する情報を不開示情報の 1 つに挙げ、その部分を除いて開示する部分開示を定めています。

どちらの場面でも、共通する論点は 3 つです。第三者の情報を伏せること、伏せた部分が読めてはいけないこと、伏せた理由を示すことです。どこを伏せるかの判断は、開示する事業者や機関が 1 件ずつ行います。このページは、その作業の前に知っておきたいことを、ガイドラインと審査基準の言葉で並べます。

医療機関が患者にカルテを開示する場面は、カルテ開示で伏せる部分・絞る部分 にまとめています。

事業者が本人からの開示請求に応じるとき

「全部又は一部を開示しないことができる」場合

個人情報保護法 第 33 条第 2 項は、本人から保有個人データの開示を請求されたときは、遅滞なく開示しなければならないとしたうえで、「ただし、開示することにより次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。」と定めています。各号は次の 3 つです(個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」3-8-2 に掲載)。

  • (1)本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
  • (2)当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
  • (3)他の法令に違反することとなる場合

この記事が扱うのは、主に(1)の「第三者の」権利利益の場面です。たとえば、本人の記録の中に、ほかの従業員や取引先の担当者の名前や連絡先が書かれていることがあります。その部分を伏せ、残りを開示する。これが「一部を開示しない」の具体的な形の 1 つです。

「著しい支障」は例外的なとき

(2)について、通則編は「単に開示すべき保有個人データの量が多いという理由のみでは、一般には、これに該当しない。」と書いています。「著しい支障」は、業務に単なる支障ではなく、より重い支障を及ぼすおそれがある例外的なときに限られる、という書き方です。

開示しないときは、その旨を通知し、理由を説明するよう努める

通則編によれば、開示しない旨の決定をしたときは、遅滞なく、その旨を本人に通知しなければなりません(法第 33 条第 3 項)。さらに 3-8-6 は、措置の全部または一部をとらない旨を通知する場合は「併せて、本人に対して、その理由を説明するように努めなければならない。」と書いています(法第 36 条)。

どの情報が(1)〜(3)に当たるかは、個別の判断です。迷うときは、個人情報保護委員会のガイドラインを確かめ、専門家に相談してください。

行政機関等が開示請求に応じるとき

開示請求者以外の個人に関する情報は不開示情報

国の行政機関や地方公共団体の機関などが保有個人情報の開示請求を受けたときは、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)」が手続きを整理しています。7-1-4 は、不開示情報が含まれている場合を除いて開示しなければならない(法第 78 条)としたうえで、不開示情報の類型の 1 つに、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものを挙げています(同条第 1 項第 2 号)。

部分開示: 氏名などを除いて開示する

同じガイドラインの 7-1-5 は、部分開示として、次の 2 つを書いています(法第 79 条)。

  • 不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができるときは、その部分を除いた部分を開示しなければならない(同条第 1 項)
  • 開示請求者以外の特定の個人を識別できる情報が含まれる場合、特定の個人を識別することができる記述等及び個人識別符号を除くことで、開示しても開示請求者以外の個人の権利利益が侵害されるおそれがないと認められるときも、同じく除いた部分を開示する(同条第 2 項)

つまり、ほかの人の名前が書かれているからといって、記録をまるごと出さないのではなく、名前など、誰かが分かる部分を除いて出すことが求められる場面がある、ということです。

基準は機関ごとに定めて公にする

行政機関等編は、開示決定等は行政手続法の申請に対する処分に当たるので、各行政機関の長等は審査基準を策定し、ホームページで公表するなどの措置を講じる必要がある、と書いています。具体的な扱いは、開示する機関の審査基準や規程を確かめてください。地方公共団体の機関については、情報公開条例との整合を図るため、条例で定めることで不開示情報の範囲を調整できる仕組みもあります(法第 78 条第 2 項)。

伏せた部分は読めてはいけない

「除く」とは、内容が分からないように墨塗り・被覆すること

伏せ方について具体的に書いている官公庁の資料として、厚生労働省「厚生労働省が保有する行政文書の開示請求に対する開示決定等に係る審査基準」の「部分開示の方法に関する判断基準」があります。これは行政文書の開示請求(情報公開)についての基準ですが、伏せ方の考え方がよく分かります。

この基準は、部分開示の「除く」を、「不開示情報が記録されている部分を、当該部分の内容が分からないように墨塗り、被覆等を行い、行政文書から物理的に除去することを意味する。」と説明しています。

伏せ方の選び方については、次のように書いています。

「不開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗りつぶすか等の方法の選択は、不開示情報を開示した結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することとなる。」

黒く塗るか、被覆するか、主要な部分だけ塗るかは選べます。ただし、どの方法でも伏せたはずの情報が読めてしまってはいけない、という条件が付いています。

中央労働委員会の「中央労働委員会の保有する個人情報の開示、訂正、利用停止決定等に係る審査基準」にも、ほぼ同じ言い回しがあります。ただし、こちらは「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」に基づく基準として書かれたものです。この法律は、令和 3 年の法改正で今の個人情報保護法に統合されています(行政機関等編の冒頭の説明による)。今の法律の下の基準としてではなく、考え方の参考として読んでください。

紙なら「コピーに墨を塗って、再びコピーする」

同じ厚労省の基準は、「文書の記載の一部を除くことは、コピー機で作成したその複写物に墨を塗り再複写する等して行うことができ」と書いています。原本に直接塗るのではなく、コピーを塗り、それをさらにコピーする、という手順です。

PDF で伏せるときは、紙とは別の注意が要ります。PDF で伏せるときの注意 で説明します。

不開示の理由を示す・残す

理由を示す決まりは、場面ごとに違う

  • 事業者:通則編 3-8-6 のとおり、開示しない旨を通知するときは、理由を説明するよう努めなければならない(法第 36 条)
  • 行政機関等:行政機関等編 7-1-8 は、開示決定等は行政手続法に規定する申請に対する処分に該当するので、各行政機関の長等は「同法第8条の規定に基づき処分の理由を示す必要がある。」と書いています。地方公共団体の機関も同じだと注記しています

伏せた箇所ごとに、どの理由かが分かるようにしておく

文書の中の何か所かを伏せると、あとで「この黒い部分は何の理由で伏せたのか」を説明する場面が出てきます。伏せる作業をするときに、伏せた箇所と、その理由(条項)を対応づけて記録しておくと、通知や問い合わせへの回答を作るときに迷いません。理由の書き方や様式は、機関や事業者の規程に従ってください。どの条項に当たるかの当てはめも、各機関・各事業者の判断です。

理由を黒塗りの中に書き込む方法もあります。Fuseji のプロ版・事務所版では、「法5条1号」のような理由を黒塗りの中に白い文字で入れて焼き込み、理由ごとの件数とページを検証レポートに残せます。

PDF で伏せるときの注意

黒い四角を重ねただけにしない

開示する記録を PDF で用意するとき、注釈や図形で黒い四角を重ねただけだと、下の文字はファイルの中に残っています。文字を選んでコピーすると、伏せたはずの第三者の名前が読めてしまいます。これでは、審査基準の言う「不開示情報を開示した結果」になりかねません。

PDF で伏せるなら、下の文字ごと消す(焼き込み)方式を使います。塗りが薄くて下の文字が透ける、という失敗もあります。やり方は PDF を黒塗り(墨消し)する正しい方法 に、失敗の型は 黒塗りが「見える」「剥がせる」原因と、渡す前の確かめ方 にまとめています。渡す前の PDF は 剥がしテスト(無料)で、黒い四角の下に文字が残っていないか、見えない文字や文書情報が残っていないかを調べられます。

Fuseji の使いどころ

Fuseji(伏字)は、日本語の PDF と画像から、氏名・住所・電話番号などの個人情報を候補として示し、選んだ部分を下の文字ごと焼き込むアプリです。決まった形の無い部分は、ページの上でドラッグして範囲を囲んで消せます。書き出した直後に、消した語が残っていないかを自動で確かめます。

  • 墨消し理由(プロ版・事務所版):行政機関情報公開法 第 5 条の各号を最初から選べます。自治体の条例など、自分の使う条項を短い表記と正式な表記で登録することもできます
  • 検証レポート:理由ごとの件数とページ、理由を付けていない箇所の数を残します。消した語そのものはレポートに載りません

検出は「候補の提示」です。漏れがないことを保証するものではないので、最終的な確認は画面で行ってください。どこを伏せるか、どの条項に当たるかを決めるのは、Fuseji ではなく開示する側です。開示請求の対応向けの説明は 開示請求に対応する方へ、価格は 価格 にあります。

手順のまとめ

  1. 請求の根拠を確かめる:事業者への請求か、行政機関等への請求か。行政機関等なら、その機関の審査基準を確かめる
  2. 原本は残す:記録そのものには手を加えず、写しを作ってから伏せる
  3. 第三者の情報を探す:氏名・連絡先など、開示請求者以外の特定の個人が分かる部分を洗い出す
  4. 伏せる範囲と理由を決める:箇所ごとに、どの理由(条項)で伏せるかを決め、記録する。判断に迷うものは担当部署や専門家に相談する
  5. 下の文字ごと消す:PDF なら焼き込み方式で。紙ならコピーを塗ってさらにコピーする
  6. 読めないことを確かめる:透けていないか、文字を選んでコピーできないかを確かめる。PDF は剥がしテストで調べる
  7. 理由を通知・説明する:開示しない部分があることと、その理由を、それぞれの決まりに沿って伝える

このページは、参考に挙げたガイドライン・審査基準の要点を整理したものです。個別の請求で何を伏せるか、どの条項に当たるかは、個人情報保護委員会のガイドラインを確かめ、担当部署や専門家に確認してください。

参考