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病歴要約に添える退院時サマリーの写し — 塗りつぶす患者の情報と、残す患者 ID

先に結論

日本内科学会の資格認定試験では、出願の方法によって、病歴要約と一緒に退院時サマリー・手術記録・剖検報告書のコピーをスキャンしてアップロードします。そのコピーに載っている患者の情報をどう扱うかは、学会の案内にはっきり書かれています。2026 年度の内科専門医試験と総合内科専門医試験の案内は、次のとおりです。

  • 消すもの:患者の氏名・生年月日・住所・連絡先など、紹介元(先)の病院(医師)名
  • 残すもの:患者 ID・年齢・性別(照合と確認のため、読める状態にする)
  • 消し方:マジックインキで塗りつぶしたあと再度コピーして透けないようにする、または先に付箋などで覆ってスキャンする、など

気をつけたいのは、黒く塗っただけでは下の文字が読めてしまうことがある点です。学会は、塗ったのに読める状態のコピーについて、失格になることがあると注意しています。このページでは、学会の案内の言葉どおりに消すもの・残すものを整理し、紙で塗る場合と、スキャンした PDF を画面で消す場合の注意をまとめます。

ここで扱うのは日本内科学会の試験の案内です。ほかの学会の専門医の出願で症例の写しを出す場合は、その学会の案内を確かめてください。

写しを出すのは、どの出願か

2026 年度の案内では、出願の種類で手続きが分かれている

「2026年度 第6回 内科専門医 資格認定試験」の案内は、J-OSLER のプログラムで研修した人、病歴要約の提出が免除される人、病歴要約 29 症例の提出が必要な人で、出願の手続きを分けて書いています。コピーのアップロードが書かれているのは、病歴要約 29 症例の提出が必要な人の手続きです。症例ごとに、次のコピーを出します。

  • 退院時サマリー(外来症例の場合にはカルテ)のコピー:29 症例分
  • 手術記録のコピー:2 症例分
  • 剖検報告書のコピー:1 症例分

「2026年度 第54回 総合内科専門医 資格認定試験」の案内でも、病歴要約 10 症例の提出が必要な人は、退院時サマリー(外来症例の場合にはカルテ)のコピーを 10 症例分アップロードします。

紙で出すのではなく、スキャンしてアップロードする

内科専門医試験の案内は「提出方法をすべてオンライン化いたしました。」と書き、「郵送での提出物はありません。」としています。退院時サマリーのコピーは「1ページあたりがA4判になるようにフルカラーでスキャンしアップロードしてください。」とあります。つまり、患者の情報を消したコピーは、最後には PDF などのファイルになって学会に届きます。

病歴要約の評価は、合否にかかわります。案内は「病歴要約評価は合否判定に含まれます。」とし、筆記試験の結果が合格基準に達していても、病歴要約が F 評価なら全体として不合格になると書いています。

消すもの・残すもの

学会の案内の言葉

2026 年度の内科専門医試験と総合内科専門医試験の案内は、病歴要約の作成の項で、次のように書いています。

「患者ID、年齢、性別を除いた患者個人情報(氏名、生年月日、住所、連絡先等)や紹介元(先)病院(医師)名は、必ずマスクしてください。(患者ID、年齢、性別は確認できる状態にしてください)」

続けて、消し方として「個人情報を消去(マジックインキで塗りつぶすなど)した後、再度コピーして透けて見えないようにするか、もしくは予め付箋等で覆ってスキャンするなど」、読み取れない状態にしてアップロードするよう求めています。そのうえで「患者個人情報への適切な配慮は評価項目に含まれます。」とあります。

患者 ID を残す理由

案内からリンクされている「病歴要約における患者個人情報の取り扱い」は、患者 ID について「患者 ID は照合のため施設の ID としますが、施設で責任を持って管理する限りにおいては連結可能な独自の ID を用いても構いません.」と書いています。独自の ID に変えた場合の対応表は、病院長の責任の下で保管し、学会からの問い合わせに応じて照合できるようにしてほしい、としています。

患者 ID は、症例が本物かを確かめるのにも使われます。同じ文書は、症例の不正使用の疑いが出たときに「カルテと退院時要約が照合不能となった場合は虚偽の症例要約と判断して不合格となる場合があります.」と書いています。患者 ID まで一緒に塗りつぶさないことが大切です。

病歴要約そのものには、初めから書かない

病歴要約の本文は自分で書くので、消すのではなく書かない形になります。同じ文書は、病歴要約について「患者氏名(イニシアル)・生年月日・住所・連絡先等は記載しない.」とし、紹介元(先)の病院(医師)名は避けて『近医』などと書くよう求めています。学会の「病歴要約を作成する上でのチェックポイント」も、「患者を特定できるような氏名、イニシアル、生年月日、居住地は記載しない.」と書いています。

自分の名前は消さずに、蛍光ペンで塗る

反対に、残して目立たせるものもあります。退院時サマリーのコピーについて、案内は「受け持ったことが分かるように主治医(担当医・受持医)欄に記載されている先生ご自身の御芳名を蛍光ペンで塗ってください。」と書いています。剖検報告書のコピーも同じです。手術記録と剖検報告書は、患者 ID が記載されているものを出すよう書かれています。

まとめると、1 枚のコピーの中に、塗りつぶす名前(患者・紹介元の病院や医師)と、残す名前(主治医欄の自分)と、残す番号(患者 ID)が混ざっています。名前を機械的にすべて消すと、残すべきものまで消えてしまいます。

塗っただけでは読めてしまう

学会が見本で示している失敗

学会の「患者個人情報の取り扱いについて」のページは、手術記録・剖検報告書・退院時サマリーのコピーについて、「きちんと患者氏名等が消去されていないケースがあります。」と書いています。塗りつぶしても患者氏名が見えてしまう場合は、「個人情報保護を十分理解していないとの判断で、失格になることがあります。」としています。

同じページには見本の画像があり、悪い例は「黒く塗りつぶしただけ」で文字が判読できてしまうもの、良い例は「黒く塗りつぶし更にコピー」して文字が裏映りしていないもの、と示されています。塗った紙をそのままスキャンするのではなく、塗ったあとにもう一度コピーするか、先に付箋で覆ってからスキャンするのは、この透けを防ぐための手順です。

評価の手引きでも、配慮の欠けた例は F

学会の「資格認定試験 病歴要約評価の手引き」は、F(不合格)評価と見なす例の 1 つに「患者個人情報への配慮が著しく欠けている.」を挙げ、例として「(例:退院時サマリーのコピー等で患者個人情報が一切マスクされていない)」と書いています。29 症例・10 症例と枚数が多いので、1 枚の塗り忘れや塗り残しが起きないよう、出す前の確認の手順を決めておくと安心です。

スキャンした PDF を画面で消すとき

学会の案内は、マジックインキや付箋を例として挙げています(「塗りつぶすなど」「スキャンするなど」)。紙で塗ってからスキャンする代わりに、スキャンした PDF を画面の上で消す方法もあります。その場合は、紙とは別の失敗に気をつけます。

  • 黒い四角を重ねただけ:PDF の編集ソフトの図形や注釈で黒い四角を置いても、下の画像はファイルの中に残っています。四角を動かしたり、画像を取り出したりすると元に戻せてしまいます
  • 見えない文字の層:スキャナーや PDF のソフトが文字認識をかけると、ページの画像の上に目に見えない文字の層が付くことがあります。画像の上で塗っても、この層の文字は残ります。見分け方は スキャンした PDF の黒塗りで文字が残る理由と、渡す前の確かめ方 にまとめています

画面で消すなら、下の画像や文字ごと消す(焼き込み)方式を使います。消したあとの PDF は 剥がしテスト(無料)で、黒い四角の下に文字が残っていないかを調べられます。どの方法で消す場合も、アップロードする前にできあがったファイルを開いて、患者の情報が読めないこと、患者 ID・年齢・性別と自分の名前が読めることを確かめてください。方法について迷うときは、学会の試験の問い合わせ先に確認してください。

アップロードの前の手順と、道具の使いどころ

  1. 今年度の案内を読む:自分の出願が、コピーのアップロードが要る手続きかを確かめる
  2. 病歴要約には書かない:氏名・イニシャル・生年月日・住所(居住地)・連絡先。紹介元(先)は「近医」などと書く
  3. コピーで消すものに印を付ける:患者の氏名・生年月日・住所・連絡先など、紹介元(先)の病院(医師)名
  4. 残すものを確かめる:患者 ID・年齢・性別。主治医欄の自分の名前は蛍光ペンで塗る
  5. 読めない状態にする:紙なら塗ったあと再度コピーする、または付箋で覆ってスキャンする。画面なら焼き込みで消す
  6. できあがったファイルで確かめる:A4・フルカラーで、患者の情報が透けていないか。PDF なら 剥がしテスト で下に文字が残っていないか
  7. 原本を保管する:案内は、病歴要約と研修歴の原本は破棄せずに手元で保管するよう書いています

Fuseji でできること・できないこと

Fuseji(伏字)は、日本語の PDF と画像(PNG・JPEG・HEIC)から、氏名・住所・生年月日・電話番号のほか、「患者ID」「カルテ番号」「入院番号」の後ろの番号、「〇〇病院」「〇〇クリニック」のような医療機関の名前などを候補として示します。スキャンした画像だけの PDF は、Mac の文字認識で文字を読み取ってから候補を出します。選んだ部分は下の文字ごと焼き込み、書き出した直後に、消した語が残っていないかを自動で確かめます。原本のファイルは上書きしません。

病歴要約の写しで使うときは、次の点に気をつけてください。

  • 患者 ID は残す:患者 ID・カルテ番号は、標本や検査の番号・職員番号とは別の種類です。確認の画面で種類ごとにまとめて外せます
  • 自分の名前は残す:主治医欄の自分の名前が候補に挙がったら、確認の画面で外してください。辞書の「消さない語」に入れておけば、次からは候補に挙がりません
  • 年齢・性別も残す:書き出したあと、読める状態のままかを画面で確かめてください
  • 検出は「候補の提示」です。拾えないものもあるので、最終的な確認は画面で行ってください

医療機関・研究者向けの使い方は 医療機関・研究者の方へ にあります。無料版でも検出・確認・書き出し・剥がしテストが使えます(書き出したファイルには透かしが入ります)。ダウンロード から試せます。

このページは、参考に挙げた日本内科学会の案内の要点を整理したものです。試験の案内は年度ごとに出されます。出願のときは、その年度の案内を確かめ、分からない点は学会に確認してください。

参考