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黒塗りして渡した書類の記録を残す — いつ・どのファイルを・何件消したか

先に結論

開示の求めに応じた書類、裁判所や役所に出した写し、取引先に送った資料。黒塗りをして外に出した PDF は、出したあとで「あのとき、どれを、どう消して出したか」を聞かれることがあります。点検のとき、苦情を受けたとき、黒塗りが剥がせると分かったとき、などです。

そのときに手元に何も無いと、送ったメールを探し、ファイルを開き直し、担当者の記憶をたどることになります。黒塗りして出すたびに 1 行ずつ記録を残しておけば、答えるための材料が最初からそろいます。

  • ガイドラインは、黒塗りの記録を名指しで求めてはいない:ただ、個人データの取扱いの記録を整えることを、安全管理措置の手法の例として挙げています
  • 漏えい等の報告で聞かれる事項と並べると、何を残せばよいかが見える:いつ・何の項目を・何人分、が答えやすくなる記録にする
  • 消した語そのものは書かない:記録が新しい個人情報の置き場所にならないようにする

このページは、これから出す PDF の記録の話です。すでに出した PDF を見直す手順は 過去に出した黒塗りの PDF を点検する に、剥がせる黒塗りが起きたときの対応は 黒塗りが剥がせた事故から学ぶこと にまとめています。

ガイドラインが記録について書いていること

個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、民間の事業者が講じる安全管理措置を、組織的・人的・物理的・技術的などに分けて説明しています。このうち 10-3 の組織的安全管理措置に、記録の話が出てきます。

規律に従った運用と、その記録

10-3 の(2)は、「あらかじめ整備された個人データの取扱いに係る規律に従って個人データを取り扱わなければならない。」としたうえで、「なお、整備された個人データの取扱いに係る規律に従った運用の状況を確認するため、利用状況等を記録することも重要である。」と続けています。

手法の例としては、「システムログその他の個人データの取扱いに係る記録の整備や業務日誌の作成等を通じて、個人データの取扱いの検証を可能とすることが考えられる。」とあり、記録する項目の例に、個人情報データベース等の利用・出力状況や、個人データが記載又は記録された書類・媒体等の持ち運び等の状況が並んでいます。

点検と見直し

同じ 10-3 の(5)は、「個人データの取扱状況を把握し、安全管理措置の評価、見直し及び改善に取り組まなければならない。」としています。手法の例には、「個人データの取扱状況について、定期的に自ら行う点検又は他部署等による監査を実施する。」があります。

黒塗りに当てはめると

ガイドラインの例に「黒塗りの記録」という言葉はありません。どんな記録をどこまで残すかは、事業の規模や取り扱う情報によって変わり、ガイドラインも手法を「例示」として示しています。自分たちに何が要るかは、ガイドラインの原文を確かめ、必要なら専門家に相談してください。

そのうえで、黒塗りして書類を外に出すことは、個人データの載った書類を外に出す取扱いの一つです。「誰が、いつ、どの書類を、どう消して、どこに出したか」が後から分かれば、決めた手順どおりに消して出したかを確かめられ、点検のときにも使えます。

漏えい等の報告で聞かれること

黒塗りが剥がせる PDF を出していたと分かったとき、それが法律上の「漏えい」や報告の対象に当たるかは、個別の判断です。このページでは判断しません。ここでは、報告が必要になった場合に何を聞かれるかを見て、記録に何を残しておくと答えやすいかを考えます。

報告の 9 つの事項

通則編 3-5-3-3 は、委員会への報告の事項として、規則第 8 条第 1 項の次の 9 つを挙げています。

  1. 概要
  2. 漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある個人データの項目
  3. 漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある個人データに係る本人の数
  4. 原因
  5. 二次被害又はそのおそれの有無及びその内容
  6. 本人への対応の実施状況
  7. 公表の実施状況
  8. 再発防止のための措置
  9. その他参考となる事項

報告は、原則として「個人情報保護委員会のホームページの報告フォームに入力する方法により行う。」とされています。報告には速報と確報があり、速報については「報告をしようとする時点において把握している内容を報告すれば足りる。」。一方、確報では「3-5-3-3(1)から(9)までに掲げる事項の全てを報告しなければならない。」とされ、期限は知った日から 30 日以内(規則第 7 条第 3 号の、不正の目的をもって行われたおそれがある行為による事態は 60 日以内)です。

記録があると答えやすくなる事項

ガイドラインは、それぞれの事項で何を報告するかも説明しています。そのうち、出した書類の記録と関わるのは次の部分です。

  • 概要:「発生日、発覚日、発生事案、発見者、規則第7条各号該当性、委託元及び委託先の有無、事実経過等を報告する。」。いつ、どの書類を、誰に出したかが分かれば、事実経過を組み立てやすくなります
  • 項目:個人データの項目を、「媒体や種類(顧客情報、従業員情報の別等)とともに報告する。」。消した情報の種類(氏名・住所・番号など)を書いておけば、どの項目が問題になりうるかを早く絞れます
  • 本人の数:消した数や、書類に載っていた人数の目安があれば、数えるところから始めずに済みます
  • 再発防止のための措置:「実施済みの措置と今後実施予定の措置に分けて報告する。」。消し方や確かめ方を記録しておけば、どの手順が抜けていたかをたどれます

記録があるから報告が済む、というものではありません。原因や二次被害の有無は、記録とは別に調べる必要があります。ただ、出した書類の一覧が最初からあれば、「どの書類が対象か」を探すところで時間を使わずに済みます。

なお、令和 8 年 7 月 17 日に個人情報保護法の改正法が公布され、委員会は施行に向けて政令・規則・ガイドラインなどの整備を進めるとしています。報告の決まりを確かめるときは、その時点の委員会の案内を見てください。このページは民間の事業者向けの通則編をもとにしています。国の行政機関や地方公共団体などは、それぞれに当てはまる決まりを確かめてください。

記録に書く項目、書かない項目

書いておくとよい項目

次は、上の報告の事項と点検のしやすさから考えた例です。全部をそろえる必要はありません。続けられる範囲で決めてください。

  • 日時と担当:いつ、誰が黒塗りして書き出したか
  • どのファイルか:元のファイル名と、書き出したファイル名。ファイル名に人の名前が入るなら、名前の代わりに受付番号や、ファイルを見分けるための値(下で説明するハッシュ)を書く
  • どこに出したか:提出先・送付先・掲載したページ
  • 何を、何件消したか:種類ごとの数(氏名・住所・電話番号など)と、全部で何件か。ページ数も
  • どう消して、どう確かめたか:下の文字ごと消す(焼き込み)方式か、出す前に剥がせないかを確かめたか、その結果
  • 理由:開示の手続きなどで、消した理由を示す必要があるときは、理由ごとの数や決定の番号

ファイルを見分けるハッシュ

ハッシュ(SHA-256 など)は、ファイルの中身から計算する長い英数字です。中身が 1 文字でも違えば、まったく別の値になります。記録にハッシュを書いておけば、あとで「この PDF は、記録のこの行で出したものと同じか」を、ファイル名に頼らずに確かめられます。ファイル名を記録に書きたくないときの照合の手段にもなります。

書かない項目

記録には、消した語そのもの(氏名・番号など)を書きません。書けば、その記録が黒塗りの前の書類と同じ情報を持つことになり、守るものが増えてしまいます。「3 ページ目の氏名 2 件」のように、場所と種類と数だけで足ります。同じ理由で、ファイル名に人の名前が入る運用なら、ファイル名を書かない形にしておきます。

置き場所と、続けるための工夫

消えない場所に置く

記録を、黒塗りに使ったアプリの中にだけ残していると、アプリを入れ直したときやパソコンを替えたときに失われることがあります。事務所の共有フォルダなど、決めた場所にファイルとして置き、ほかの書類と同じように控えを取っておきます。

見られる人を決める

消した語を書かなくても、記録には「いつ、どこに、どんな書類を出したか」が並びます。それ自体が業務の情報です。見られる人と、書き足せる人を決めておきます。

手で書かずに済む形にする

記録は、続かなければ役に立ちません。書き出すたびに手で表に書き写す運用は、忙しい日に抜けます。黒塗りの道具が書き出しのたびに自動で 1 行足す形にできれば、抜けにくくなります。

記録を点検に使う

ガイドラインが例に挙げる「定期的に自ら行う点検」のときに、記録はそのまま点検の一覧になります。記録の中から、いまも公開している書類や、消した中身が重い書類を選んで、剥がせないかを確かめます。確かめ方は 過去に出した黒塗りの PDF を点検する に、無料で使える道具は 剥がしテスト にあります。

Fuseji の墨消しの台帳

Fuseji(伏字)は、日本語の PDF と画像から、氏名・住所・電話番号などの個人情報を候補として示し、選んだ部分を下の文字ごと焼き込む Mac・Windows のアプリです。書き出した直後に、消した語が残っていないかを自動で検証します。

0.1.36 から、有料版では「墨消しの台帳」を使えます。設定で「書き出すたびに台帳に記録する」をオンにして保存先のフォルダを選ぶと、検証に合格した書き出しごとに、そのフォルダの「墨消し台帳_年.csv」に 1 行足します。最初はオフで、使う人だけがオンにします。

  • 書く列:日時・担当・元のファイル名・書き出したファイル名・SHA-256・ページ数・消した数・種類ごとの数・理由ごとの数・理由の無い数・消し方・確認済みのページ・検証・Fuseji のバージョン・端末・備考
  • 消した語は書きません。ファイル名に氏名が入る場合は「台帳にファイル名を書く」をオフにでき、そのときは SHA-256 で照合できます
  • アプリを削除しても台帳は残ります。フォルダが見つからないなどで書けなかったときは、次に書けたときにまとめて記録します

検出は「候補の提示」で、漏れがないことを保証するものではありません。最終的な確認は画面で行ってください。台帳は記録を残す手段の一つで、それだけで手順や報告が足りるものではありません。価格は 価格、無料版は ダウンロード から入手できます。

このページは、参考に挙げた個人情報保護委員会のガイドラインの説明から、黒塗りして出した書類の記録の残し方を整理したものです。記録をどこまで残すか、出した書類が漏えい等に当たるか、報告や本人への通知が要るかは、ガイドラインの原文を確かめ、専門家に確認してください。

参考