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情報公開で一部を不開示にするときの理由の示し方 — 通知書の書き方と、黒塗りの箇所との対応

先に結論

国の行政機関が行政文書の一部を不開示にして開示するとき、担当者の手元には 2 つの作業が残ります。1 つは文書の写しから不開示の部分を除く(黒塗りする)こと、もう 1 つは開示請求者に決定を通知し、なぜその部分を出さないのかを示すことです。このページは後者を、法令と国の通知・審査基準・審査会の答申の言葉で並べます。

  • 決定は書面で通知する:行政機関情報公開法 第 9 条は、開示する決定も、開示しない決定も、開示請求者に書面で通知するよう定めています
  • 理由は処分と同時に、書面で示す:行政手続法 第 8 条は、申請を拒否する処分をするときは同時に理由を示し、書面でするときは理由も書面で示すと定めています
  • 条文の番号だけでなく、当たることの根拠も:総務省行政管理局長の通知は、不開示決定に際して、根拠の条文と、その条文に該当することの根拠を付記するよう求めています

どの部分が不開示情報に当たるか、理由をどこまで具体的に書くかは、開示する機関が 1 件ずつ判断します。このページは判断の代わりにはなりません。通知書の様式や書き方は機関の規程に従い、迷うときは担当部署や専門家に確認してください。何を除くか(不開示情報の範囲と除き方)は 情報公開請求で部分開示するときの黒塗り にまとめています。

開示決定等は書面で通知する(第 9 条)

一部を開示するときも、全部を開示しないときも

行政機関情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)第 9 条第 1 項は、行政文書の全部または一部を開示するときは、「その旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨及び開示の実施に関し政令で定める事項を書面により通知しなければならない。」と定めています。一部を不開示にする部分開示も、この「一部を開示するとき」に入ります。

同じ条の第 2 項は、全部を開示しないとき(存否を明らかにしないで拒否するときと、行政文書を保有していないときを含む)は、「開示をしない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない。」と定めています。

政令で定める事項は「開示の実施」の案内

第 1 項の「政令で定める事項」は、施行令 第 6 条に並んでいます。求めることができる開示の実施の方法、方法ごとの開示実施手数料の額、事務所で開示を実施できる日・時間・場所、写しを送付する場合の準備に要する日数と送付に要する費用などです。どれも「どうやって受け取るか」の案内で、不開示にした理由はこの一覧に入っていません。理由を示す決まりは、次の節の行政手続法にあります。

理由を示す決まり(行政手続法 第 8 条)

拒否する処分には、同時に理由を

行政手続法 第 8 条第 1 項は、行政庁が申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、「申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」と定めています。第 2 項は、「前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。」としています。

開示請求に対する決定も、この「申請に対する処分」に当たるとされています(次の小見出しの厚労省の審査基準も、その前提で書かれています)。総務省行政管理局長の通知「行政機関の保有する情報の公開に関する法律及び独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律の趣旨の徹底等について」(平成 17 年 4 月 28 日)は、不開示決定について、行政手続法 第 8 条の定めるところにより、行政機関はその理由を提示しなければならないこととされている、と書いています。この通知は、いまも総務省の情報公開制度のページに運用通知の 1 つとして載っています。

存否を明らかにしない拒否にも理由が要る

文書があるかないかを答えるだけで不開示情報を開示することになるとき、機関は存否を明らかにしないで拒否できます(第 8 条)。この場合も理由は省けません。厚生労働省の審査基準(存否に関する情報が不開示情報となることに関する判断基準・別添 5)は、存否を明らかにしない拒否も申請に対する処分であるから、行政手続法 第 8 条に基づき処分の理由を示す必要がある、と書き、理由の程度について「開示請求者が拒否の理由を明確に認識し得るものであることが必要であると考えられる。」としています。

理由に書くこと:根拠の条文と、当たることの根拠

2 つをそろえる

先の局長通知は、不開示決定に際して「その根拠条文及びその条文に該当することの根拠を付記することについて、なお一層徹底すること。」と求めています。「第 5 条第 1 号」のような条文の番号は前者で、その部分の情報がなぜその号に当たるのかが後者です。

情報公開・個人情報保護審査会の答申(次の節)は、理由の提示の制度の趣旨を、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、「処分の理由を相手方に知らせて不服申立て等に便宜を与える趣旨」から設けられたもの、と説明しています。請求者が通知書を読んで、どこが、どの理由で出されなかったのかが分かり、争うかどうかを決められる書き方が求められている、ということです。

文書が無いときは、無い理由も

局長通知は、文書の不存在を理由とする不開示決定について、請求の対象の文書をそもそも作成・取得していない、作成したが保存期間が経過したので廃棄した、などの例を挙げ、「対象文書が存在していないことの要因についても付記することを徹底すること。」としています。厚労省の審査基準も、行政文書を保有していない場合は「法第9条の書面に、当該行政文書を保有していない旨を記載するものとする。」と書いています。

存否を明らかにしないときの具体さ

別添 5 は、存否を明らかにしない拒否での理由の示し方について、当該情報の性質、内容、開示請求書の記載内容等を踏まえ、請求のあった文書の存否を答えることにより、「どのような不開示情報を開示することになるかをできる限り具体的に提示することになる。」と書いています。

号を並べるだけでは足りないことがある

審査会が理由の提示の不備を指摘した例

開示決定等に審査請求があったとき、裁決をする行政機関の長は、審査請求を却下する場合などを除き、情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければなりません(行政機関情報公開法 第 19 条)。総務省の情報公開・個人情報保護審査会の答申の 1 つ(令和 6 年度(独情)答申第 119 号)は、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律の下での一部開示決定を扱ったもので、理由の書き方について具体的に述べています。国の行政機関の法律とは別の法律ですが、不開示情報の号の組み立ては似ており、通知書を書く側の参考になります。

この答申で審査会が確かめた通知書には「不開示とした部分とその理由」の欄があり、「不開示部分が表の形で整理されており」、理由としては各号の条項が記載されているだけでした。答申は、提示すべき理由について、「開示請求者において、不開示とされた箇所が法5条各号の不開示理由のいずれかに該当するのかが、その根拠とともに了知し得るものでなければならず」と書いています。

個人の情報と、それ以外で分かれた

答申は、個人に関する情報の号で不開示にした「代表研究者」「電話」などの情報については、「詳細な説明を加えなくとも個人に関する情報であると容易に認められる」ことを踏まえ、その部分の理由の提示がただちに違法とはいえない、としました。一方、多くを占めた法人等の情報や事務・事業に関する号で不開示にした部分は、公になるとどのような根拠でその号に当たるのかが、通知書の記載から読み取れないとしました。

結論として答申は、処分庁が「どのような情報についてどのような根拠をもってその一部を不開示としたのかが開示請求者に明らかとなっていない」として、決定を取り消すべきだとしています。氏名や電話番号のように見れば分かるものと、出すとなぜ困るのかを説明しないと伝わらないものとで、書くべき量が違う、という読み方ができます。どこまで書けば足りるかは事案によるので、機関の過去の答申の扱いや担当部署の判断に従ってください。

黒塗りの箇所と理由を対応させる

通知書の理由と、写しの黒塗りがずれないように

請求者が受け取るのは、通知書と、黒塗りされた写しです。通知書に「どの部分を、どの理由で」と書いても、写しのどの黒塗りがそれに当たるのかが分からなければ、読み合わせができません。答申の通知書のように不開示の部分を表にまとめるなら、表の行と写しの黒塗りが 1 対 1 で対応するように、黒塗りを作る段階で、箇所ごとに理由を控えておくと、通知書を作るときに数え直さずに済みます。ここで見た法令・通知・審査基準には、黒塗りの中に条項を書き込むかどうかの定めは見当たりません。書き込むかどうか、どう書くかは機関の規程や運用に従ってください。

理由を書いても、下の情報が読めては意味がない

黒塗りの中に「法5条1号」のような短い表記を入れる場合も、塗った部分の情報そのものが読めないことが前提です。PDF のまま渡すとき、黒い四角を重ねただけだと、文字の層がある PDF では下の文字がファイルの中に残ります。除くときは下の文字ごと消す(焼き込み)方式にし、渡す前に 剥がしテスト(無料)で、黒い四角の下や文書情報に文字が残っていないかを確かめてください。失敗の型は 黒塗りが「見える」「剥がせる」原因と、渡す前の確かめ方 にあります。

Fuseji で理由を付ける場合

Fuseji(伏字)のプロ版・事務所版には「墨消し理由」の機能があります。定型として行政機関情報公開法の各号が用意されており、個人の情報には第 5 条第 1 号、法人の名前などには第 2 号が最初から入ります。条例の条項などは自由記入で、枠の中に入れる短い表記(20 字まで)と、一覧やレポートに載せる正式な表記(200 字まで)を登録できます。「枠内に理由を書く」を選ぶと、黒塗りの中に短い表記を入れて焼き込みます(白塗り+枠線・下線の消し方では枠の中に書けません)。検証レポートには理由ごとの件数とページ、理由を付けていない箇所の数が載り、消した語そのものは載りません。

手順のまとめ

  1. 原本は残す:行政文書そのものには手を加えず、写しを作ってから除く
  2. 箇所ごとに理由を決めて控える:どの部分を、どの号で不開示にするか。決めるのは機関で、迷うものは担当部署や専門家に相談する
  3. 根拠も書けるか確かめる:号の番号に加えて、その部分がなぜその号に当たるのかを説明できるか。個人の氏名などと、出すと困る理由の説明が要る情報とを分けて考える
  4. 写しから除く:紙ならコピーに墨を塗ってさらにコピーする。PDF なら焼き込み方式で。黒塗りの中に条項を書くかどうかは機関の運用に従う
  5. 通知書を作る:第 9 条の書面に、決定の内容と開示の実施の案内、不開示とした部分とその理由を書く。文書が無いときは無い理由、存否を明らかにしないときはその理由を
  6. 通知書と写しを読み合わせる:理由の一覧の箇所と、写しの黒塗りの数・ページがずれていないか。黒塗りの下の文字が読めないか

Fuseji では、理由を付けた箇所の数とページが検証レポートに残るので、通知書の一覧と写しの読み合わせに使えます。理由の付け忘れは、レポートの「理由の無い箇所」の数で気づけます。有料版で墨消しの台帳(設定から・最初はオフ)を使っていれば、書き出すたびに理由ごとの数も残ります。どの号に当たるかの判断は Fuseji では行いません。情報公開の担当の方向けの説明は 開示請求に対応する方へ にあります。

このページは、参考に挙げた法令・通知・審査基準・答申の要点を整理したものです。地方公共団体の情報公開は、それぞれの情報公開条例によります。保有個人情報の開示請求で理由を示す場面は 開示請求に応じるときの黒塗りと、不開示の理由の示し方 を見てください。個別の請求で何を不開示にし、理由をどう書くかは、機関の規程と審査基準を確かめ、担当部署や専門家に確認してください。価格は 価格 にあります。

参考