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パスポートの写しと下の 2 行(機械読み取り部分) — 黒塗りで見落としやすいところ

先に結論

口座の開設や契約、宿泊の受付、外国籍の人の雇い入れなどで、パスポート(旅券)の顔写真のページの写しを受け取ることがあります。その写しを社内で回したり、外部に渡したりする前に、一部を消すこともあるでしょう。そのとき見落としやすいのが、ページのいちばん下にある 2 行の英数字です。

  • 下の 2 行にも、上の欄と同じ情報が入っている:国際民間航空機関(ICAO)の規格 Doc 9303 は、顔写真のページの氏名・旅券番号・国籍・生年月日・性別・有効期間満了日などを、下の機械読み取り部分(MRZ)にも入れるよう定めています
  • 上の欄だけ消しても、下の 2 行から読める:機械読み取り部分は、目で読める英大文字と数字で印刷されています。氏名や旅券番号を消すなら、下の 2 行も同じように扱う必要があります
  • 新しいパスポートには住所の欄がない:令和 2 年 2 月 4 日以降に申請したパスポートには所持人記入欄がありません。住所の確認には別の書類が要ります
  • 旅券番号を残す場面もある:日本に住所のない外国人の宿泊では、宿泊者名簿に国籍と旅券番号を書き、厚生労働省の通知に基づいて旅券の写しを名簿と一緒に保存する運用です

つまり、パスポートの写しは、顔写真の欄の文字を消せば済むものではなく、番号を何でも消せばよいものでもありません。何のために受け取り、誰に渡すのかで、残すものと消すものが分かれます。個別の手続きでの扱いは、所管の官庁の案内や専門家に確認してください。

在留カードの写しは 在留カードの写しを受け取る・保管するとき に、運転免許証の写しは 運転免許証の写しと裏面 にまとめています。

顔写真のページに載っているもの

神奈川県のパスポートセンターの案内「パスポートの読みかた等」(2026 年 7 月 24 日更新)は、顔写真のページ(身分事項のページ)について「身分事項のページには、所持人の顔写真・所持人自署(サイン)・氏名・生年月日や、旅券番号、パスポートの有効期間満了日等が記載されています。」と説明しています。同じ案内によると、日本のパスポートでは次のように書かれています。

  • 旅券番号:「英字2桁と数字7桁の旅券番号」
  • 姓・名:「原則としてヘボン式ローマ字(大文字)で記載。」
  • 生年月日:「『DD MMM YYYY』(日月年)の形式で記載。」月は JAN・FEB のような英語の省略形です
  • 本籍:「本籍の都道府県名のみヘボン式ローマ字(大文字)で記載。」
  • 所持人自署:「申請書に記入した署名がそのまま転写されます。」

日本語の書類と違い、氏名も日付もローマ字と英語で書かれています。漢字の氏名や和暦の日付を探す目で見ると、見落としやすいページです。外国のパスポートでは、書き方の細部が国によって違うことがあります。

下の 2 行(機械読み取り部分)に入っているもの

規格で決まった 44 字 × 2 行

神奈川県の同じ案内は、機械読み取り部分を「ICAO(国際民間航空機関)で国際標準化された44桁2行で構成される旅券情報。」と説明しています。規格の原文は ICAO の Doc 9303 の第 4 部(パスポートの規格)で、位置について「The MRZ is located on the front of the MRP data page.」(MRZ は顔写真のページの表に置く)と定めています。

上の欄の情報を機械で読める形にしたもの

同じ規格は、入れる情報について「The data elements corresponding to Fields 03 to 09, 11 and 16 of the VIZ shall be personalized in machine readable form」と定めています。VIZ は目で読む部分(上の欄)のことで、上の欄の項目を機械読み取り部分にも入れる、という意味です。規格の表によると、おおよそ次のとおりです。

  • 1 行目:書類の種類(P)、発行国(日本なら JPN)、氏名(姓と名を記号「<」でつないだもの)
  • 2 行目:旅券番号、国籍、生年月日、性別、有効期間満了日と、旅券番号・生年月日・有効期間満了日などの検査用の数字(チェックディジット)

規格の図(Appendix B)によると、生年月日は 2 行目では YYMMDD(年の下 2 桁・月・日)の数字 6 桁になります。上の欄の「12 MAY 1990」を消しても、2 行目の数字の並びに同じ日付が残る、ということです。旅券番号も、上の欄と 2 行目の 2 か所にあります。

黒塗りで起きやすいこと

  • 上の欄だけ塗って、下の 2 行を残す:氏名・番号・生年月日を消したつもりでも、下の 2 行から読めます
  • 下の 2 行の一部だけを塗る:記号「<」で区切られた並びなので、どこからどこまでが氏名か番号かが分かりにくく、塗り残しが出やすい部分です
  • スマホで撮った写しを文字認識にかける:機械読み取り部分は機械で読むための行(規格では OCR lines)なので、画像のままでも文字として取り出されやすい部分です

本人確認の書類としてのパスポート:住所の欄がない

顔写真のある本人確認書類の 1 つ

犯罪収益移転防止法の施行規則 第 7 条は、本人確認書類に旅券を挙げています。警察庁の犯罪収益対策室(JAFIC)の資料「犯罪収益移転防止法の概要」も、自然人の本人確認書類の例として「運転免許証、運転経歴証明書、在留カード・特別永住者証明書・マイナンバーカード等のうち顔写真のあるもの、旅券(パスポート)等」を挙げています。

令和 2 年 2 月 4 日以降のパスポートには、所持人記入欄がない

神奈川県の案内は「(令和2年2月4日以降に申請したパスポートには『所持人記入欄』はありません。)」と書いています。警視庁がインターネットカフェなどの営業者に向けて出した案内も、「新型旅券は、旧型旅券にあった『所持人記入欄』が削除されているので、下記書類の提示を受け、現住居の確認をして下さい。」としています。新しいパスポートにある住所の欄は緊急連絡先の住所で、所持人の今の住所ではない、とも書いています。

JAFIC の資料も、今の住居が本人確認書類と違う場合や住居の記載がない場合は、ほかの本人確認書類や補完書類で今の住居を確かめる必要がある、と書いています(詳しくは 運転免許証の写しと裏面 の記事を参照)。

確認記録では旅券番号も記録する

同法の施行規則 第 20 条第 1 項第 18 号は、確認記録に記録する事項として「当該本人確認書類又は補完書類の名称、記号番号その他の当該本人確認書類又は補完書類を特定するに足りる事項」を挙げています。この場面では、旅券番号は消す番号ではなく、記録に残す番号です。なお、同法の本人確認の方法は 2027 年 4 月 1 日から見直され、JAFIC のチラシは、非対面では「原則本人確認書類の画像や写しを用いることはできません。」と書いています。

宿泊施設が受け取るパスポートの写し

宿泊者名簿の国籍と旅券番号

旅館業法施行規則 第 4 条の 2 第 3 項は、宿泊者名簿に書く事項として、氏名・住所・連絡先のほか「宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号」を挙げています。名簿は「その作成の日から三年間保存するものとする。」とされています(同条第 1 項)。

写しを名簿と一緒に保存する運用

厚生労働省が公表した確認の求めへの回答(令和 2 年 4 月 6 日)は、平成 17 年の健康局長通知により、旅券の呈示を求めるとともに「旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存することにより、氏名及び旅券番号等の正確を期することとしている。」と書いています。回答では、パスポートの IC チップの情報を装置で保存することも、この旅券の写しの保存とみなして差し支えない、としています(回答の中の条文の番号は、令和 5 年の改正の前のものです)。

鹿児島市の案内(2024 年 2 月 13 日更新)も、「宿泊者名簿の記載の正確を期するため、国籍及び旅券番号を記載していただく宿泊者の方については、その方の旅券の写しの保存をお願いしています。」と書いています。

つまり、宿泊施設が名簿と一緒に持つ写しでは、氏名と旅券番号は残すものです。消すことを考えるのは、写しを名簿の目的の外へ出すとき(委託先に送る、別の部署で使うなど)です。その扱いは、所管の保健所や専門家に確認してください。

消すときの注意と、手順のまとめ

消すか残すかは、目的と決まりで決める

ここまでのとおり、本人確認の確認記録でも宿泊者名簿でも、旅券番号は残す場面があります。一方、本籍や署名のように目的に照らして要るかを決めたい欄をどう扱うか、写しを外部に渡すときにどこまで見せるかは、業種の決まりと社内の規程に従い、所管の官庁や専門家に確認してください。そして消すと決めた項目は、上の欄と下の 2 行の両方で消すのが要点です。

PDF や画像で消すときの失敗

紙のコピーをペンで塗ると、塗りが薄くて透けることがあります。PDF に黒い四角を重ねただけだと、文字の層がある PDF なら下の文字がファイルの中に残っています。スキャンした PDF でも、文字認識の結果の文字の層が残ることがあります。消すなら、下の文字ごと消す(焼き込み)方式を使います。やり方は PDF を黒塗り(墨消し)する正しい方法 に、スキャンした PDF の注意は スキャンした PDF の黒塗り にあります。消したあとの PDF は 剥がしテスト(無料)で、黒い四角の下に文字が残っていないかを調べられます。

Fuseji で扱う場合

Fuseji(伏字)は、PDF と画像(PNG・JPEG・HEIC)から個人情報を候補として示し、選んだ部分を下の文字ごと焼き込むアプリです。更新履歴 のとおり、0.1.26 からパスポートの旅券番号と、下の 2 行の英数字(機械読み取り部分)を候補に挙げます。スマホで撮った写しでも、下の 2 行を行ごと消せます。0.1.27 からは「Surname」などの見出しの後ろのローマ字の名前と、「Date of birth」の後ろの英語の日付(12 MAY 1990 など)も拾い、0.1.28 からは、小さい字の見出しと大きい字の値が同じ行に並ぶパスポートのような書類で、見出しと値を 1 行として読みます。候補は消す前の目印で、残すか消すかは画面で選びます。宿泊者名簿の写しのように番号を残す場面では、候補から外してください。書き出した直後に、消した語が残っていないかを自動で確かめます。原本のファイルは上書きしません。検出は「候補の提示」で、漏れがないことを保証するものではありません。

受け取る側(事業者)

  1. 何のために受け取るかを決める:本人確認の記録か、宿泊者名簿か、雇い入れの確認か
  2. 住所の確認を分ける:新しいパスポートには所持人記入欄がない。今の住所は別の書類で確かめる
  3. 残すものを決める:確認記録や宿泊者名簿に要る氏名・旅券番号は消さない
  4. 外に出すときは、上の欄と下の 2 行をそろえて消す:氏名・旅券番号・生年月日を消すなら、機械読み取り部分も消す
  5. 消したあとに確かめる:文字を選択・検索して残っていないかを見る。剥がしテストで調べる

出す側(本人)

  1. 求められているページと目的を確かめる:顔写真のページだけでよいか、何のために写すのかを尋ねてもよい
  2. 自分で送る写しを加工しない:相手が番号を記録する手続きでは、塗った写しは受け付けられないことがある。消してよいかは相手に確かめる

このページは、参考に挙げた法令と ICAO の規格、警察庁・厚生労働省・都道府県と市の資料の要点を整理したものです。外国のパスポートの書き方は国によって違い、案内は更新されることがあります。個別の手続きでの扱いは、所管の官庁の案内を確かめ、専門家に確認してください。本人確認書類の写しの保管全般は 本人確認書類の写しを受け取る事業者の方へ、価格は 価格 にあります。

参考