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運転免許証の写しと裏面 — 住所変更の欄を写すか、どこを消すか

先に結論

口座の開設や契約の申込みで、運転免許証の写しを受け取ることがあります。そのとき迷いやすいのが「裏面もコピーするのか」「裏面に書いてあることを消してよいのか」です。

  • 引っ越しなどで住所が変わった人の免許証は、新しい住所が裏面に書かれます:道路交通法 第 94 条第 1 項は、記載事項に変更が生じたときは届け出て、免許証に変更に係る事項の記載を受けるよう定めています。埼玉県警察の案内は「なお、変更事項は、運転免許証の裏面に記載します。」と書いています
  • 犯罪収益移転防止法の確認では、今の住所を確かめる:警察庁(JAFIC)の資料は、今の住所が本人確認書類と異なる場合は、ほかの本人確認書類や補完書類で確かめる必要がある、と書いています
  • 確認記録に添えた写しの記載は、あとから消さない:同法の施行規則 第 20 条第 3 項は、変更を知ったときは確認記録に付記し、添付した写しに記載されている内容を「消去してはならない」としています
  • 裏面には住所のほかに、臓器提供の意思表示欄もある:警察庁の通達は、この欄の記入はプライバシーに関わるものとし、取り扱うときは十分に注意するよう書いています

つまり、裏面は「何でも消してよい欄」でも「何も気にせず写してよい欄」でもありません。何のために写しを受け取るのかで、要る部分と気をつける部分が分かれます。個別の手続きでどう扱うかは、所管の官庁の案内や専門家に確認してください。

マイナンバーカードの写しについては マイナンバーカードの写しと裏面の個人番号 に、携帯電話の契約で受け取る写しについては 携帯電話の契約で受け取る本人確認書類の写し にまとめています。

裏面に載るもの

住所・氏名などの変更

道路交通法 第 94 条第 1 項は、こう定めています。「免許を受けた者は、第九十三条第一項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、速やかに住所地を管轄する公安委員会…に届け出て、免許証に変更に係る事項の記載…を受けなければならない。」第 93 条第 1 項の事項には、免許を受けた人の住所・氏名・生年月日などが含まれます。

記載がどこに入るかは、各都道府県の警察の案内に書かれています。神奈川県警察の案内は、届出を受けたあと「現在お持ちの運転免許証の裏面に変更事項を記載して返却します。」と書いています。道路交通法施行規則 第 21 条第 1 項第 2 号は、再交付を申請できる場合の 1 つとして「免許証の備考欄に法第九十三条第二項に規定する事項又は法第九十四条第一項に規定する変更に係る事項の記載を受けているとき。」を挙げています。

旧姓・条件

警視庁の案内によると、旧姓の表記を選んだ場合は「運転免許証の裏面の備考欄に、旧姓を使用したフルネームが表記されます。」(表面の氏名欄に表記する方法もあります)。また警視庁の再交付の案内は、「裏面に住所、氏名等の記載事項の変更、旧姓の表記、運転免許の条件の記載がある方」が、裏面の内容を表面に表示するための手続きを案内しています。

臓器提供の意思表示欄

厚生労働省の案内によると、平成 22 年 7 月 17 日の改正臓器移植法の施行後に新しく発行される運転免許証の裏面には、順次、臓器提供の意思表示欄が設けられました。

警察庁の通達(令和 7 年 3 月 18 日)は、この欄について「免許証上に表示された臓器提供の意思等は、免許を受けた者のプライバシーに関わるものであり、また、免許証が身分証明書として活用されている実態にかんがみ、当該意思等が第三者に見られることのないようにするため」保護シールが作られ、免許を受けた人が任意に貼れる、と書いています。あわせて、意思等が記入されている免許証(保護シールが貼られた免許証を含む)を「取り扱う際には、十分に注意すること。」としています。

裏面を写すと、住所の変更の欄と一緒に、この意思表示欄も写ります。

今の住所は裏面にあることがある

表面の住所が今の住所とは限らない

住所を変えた人の免許証では、表面に書かれているのは前の住所で、新しい住所は裏面にあります。表面だけの写しを受け取ると、今の住所が分からないことになります。

犯罪収益移転防止法の確認での扱い

銀行や不動産業者など、犯罪収益移転防止法で取引時の確認が義務になっている事業者は、本人特定事項(自然人なら氏名・住居・生年月日)を確認します。警察庁の犯罪収益対策室(JAFIC)の資料「犯罪収益移転防止法の概要」(令和 8 年 8 月 7 日時点)は、次のように書いています。

「顧客等又は代表者等の現在の住居等が本人確認書類等と異なる場合又は住居等の記載がないときは、他の本人確認書類や補完書類…の提示を受け、又はこれらの書類若しくはその写しの送付を受け、現在の住居等を確認する必要があります。」

施行規則 第 6 条第 2 項も、本人確認書類やその写しに今の住居の記載がないときなどに、記載がある本人確認書類や補完書類で今の住居を確かめることができる、と定めています。

裏面の変更の記載を今の住所の確認にどう使うかは、事業者の手続きと所管の行政庁の案内によります。少なくとも、裏面に変更の記載があるかどうかを見ないまま、表面の住所を今の住所として扱わないことが、写しの受け取り方を決める出発点になります。

確認記録の写しで消してはいけないもの

変更は付記する。前の記載は消さない

犯罪収益移転防止法の特定事業者は、確認の記録(確認記録)を作り、本人確認書類の写しを添えることがあります。施行規則 第 20 条第 3 項は、本人特定事項などに変更があることを知った場合について、こう定めています。

「当該変更又は追加に係る内容を確認記録に付記するものとし、既に確認記録又は同項第三号の規定により添付した本人確認書類若しくは補完書類の写し若しくは添付資料に記録され、又は記載されている内容(過去に行われた当該変更又は追加に係る内容を除く。)を消去してはならない。」

JAFIC の資料も、変更を付記する際に「既に確認記録に記載されている内容を消去してはなりません。」と書いています。つまり、顧客から新しい住所を知らされたときでも、添付してある写しの前の住所や裏面の変更の記載を黒く塗りつぶす扱いは、この規定と合いません。新しい内容は付記するか、別の記録を作って一緒に保存します。

免許証の番号も記録する事項

施行規則 第 20 条第 1 項第 18 号は、本人確認書類の提示を受けたときに確認記録に記録する事項として、「当該本人確認書類又は補完書類の名称、記号番号その他の当該本人確認書類又は補完書類を特定するに足りる事項」を挙げています。この場面では、免許証の番号も記録に残すものです。

ここは、番号の収集が法律で制限されているマイナンバーカードや保険証(資格確認書)と違うところです。JAFIC の資料が、収集などが禁止されているとして写しのマスキングを求めている番号は、マイナンバー(個人番号)・基礎年金番号・被保険者記号・番号などで、運転免許証の番号は挙げられていません(マイナンバーカードの写し の記事を参照)。

2027 年 4 月からの本人確認

非対面では原則として写しを使わない

e-Gov 法令検索によると、令和 7 年 6 月 24 日に公布された犯罪収益移転防止法施行規則の改正などが、令和 9 年(2027 年)4 月 1 日に施行される予定です。警察庁(JAFIC)の周知用のチラシは、非対面で本人確認を受けるには運転免許証やマイナンバーカードなどの IC チップの情報を送る必要があり、「原則本人確認書類の画像や写しを用いることはできません。」と書いています。対面についても「対面で本人確認を受けるには、運転免許証やマイナンバーカード等を提示した上で、ICチップ情報を読み取らせる必要があります。」としています。各金融機関などの判断で、それより前に先行して実施する場合がある、とも書いています。

IC チップに今の住所がないとき

改正後の施行規則 第 6 条第 2 項にも、本人確認書類の写しに今の住居の記載がないときや、「当該本人確認書類に組み込まれた半導体集積回路若しくは特定電磁的記録に当該顧客等の現在の住居の情報の記録がないとき」は、記載がある本人確認書類や補完書類で今の住居を確かめることができる、という定めがあります。

JAFIC が公表した改正の Q&A(No.8)では、運転免許証の住所などの変更手続をすると IC チップに変更後の情報が記録されるという前提の問いに対し、変更前と変更後の情報を同時に送信を受ける仕様にするかは特定事業者の判断による、と答えています。

この改正は、犯罪収益移転防止法の確認をする事業者についてのものです。ほかの業種の本人確認の方法が同じように変わる、という意味ではありません。また、施行の前に受け取った写しや、施行後も写しを扱う手続きでは、ここまでの話がそのまま当てはまります。

消すときの注意と、手順のまとめ

消すか残すかは、目的と決まりで決める

ここまでのとおり、犯罪収益移転防止法の確認記録に添える写しでは、住所の変更の記載も免許証の番号も残すものです。一方、臓器提供の意思表示欄は、警察庁の通達がプライバシーに関わるものとしている欄です。確認の目的に要らない欄をどう扱うか、写しをいつまで持つかは、業種の決まりと事業者の規程に従い、所管の官庁や個人情報保護委員会のガイドライン、専門家に確認してください。

PDF や画像で消すときの失敗

消すと決めた部分があるなら、方式に気をつけます。紙のコピーをペンで塗ると、塗りが薄くて下の文字が透けることがあります。PDF に注釈や図形で黒い四角を重ねただけだと、文字の層がある PDF なら下の文字がファイルの中に残っています。画面で消すなら、下の文字ごと消す(焼き込み)方式を使います。やり方は PDF を黒塗り(墨消し)する正しい方法 に、失敗の型は 黒塗りが「見える」「剥がせる」原因と、渡す前の確かめ方 にあります。消したあとの PDF は 剥がしテスト(無料)で、黒い四角の下に文字が残っていないかを調べられます。

Fuseji で扱う場合

Fuseji(伏字)は、PDF と画像(PNG・JPEG・HEIC)から個人情報を候補として示し、選んだ部分を下の文字ごと焼き込むアプリです。運転免許証の番号なども候補に挙げます。更新履歴 のとおり、0.1.33 からは「免許証の裏の住所変更の印のような、横長の赤いゴム印も印影として最初から囲むようにしました」。囲むのは候補としてで、消すかどうかは画面で選びます。確認記録の写しのように変更の記載を消してはいけない場面では、候補から外してください。書き出した直後に、消した語が残っていないかを自動で確かめます。原本のファイルは上書きしません。検出は「候補の提示」で、漏れがないことを保証するものではありません。

受け取る側(事業者)

  1. 何のために写しを受け取るかを決める:犯罪収益移転防止法の確認か、それ以外の本人確認か
  2. 裏面の記載を確かめる:住所の変更の記載があれば、表面の住所を今の住所として扱わない
  3. 案内を決める:裏面の写しが要る場合と要らない場合を、郵送・アップロードの案内に書く
  4. 消さないものを決める:確認記録に添えた写しの記載は消さず、変更は付記する
  5. 気をつける欄を決める:臓器提供の意思表示欄を含む写しの扱いを、規程で決めておく
  6. 2027 年 4 月以降の手続きを確かめる:IC チップの読み取り・送信に切り替わる手続きを、所管の官庁の案内で確かめる

出す側(本人)

  1. 求められている面を確かめる:裏面も求められたら、何のためかを尋ねてもよい
  2. 意思表示欄を守る:警察庁の通達のとおり、保護シールを任意に貼れる
  3. 裏面の記載を表面にしたいとき:警視庁の案内のとおり、再交付の手続きで裏面の内容を表面に表示できる(手数料などは各都道府県の警察の案内を確認)

このページは、参考に挙げた法令と警察庁・厚生労働省・各都道府県の警察の資料の要点を整理したものです。個別の手続きで写しをどう扱うかは、所管の官庁の案内や個人情報保護委員会のガイドラインを確かめ、専門家に確認してください。本人確認書類の写しの保管全般は 本人確認書類の写しを受け取る事業者の方へ、価格は 価格 にあります。

参考