携帯電話の契約で受け取る本人確認書類の写し — 保存の義務と、消すのは番号だけ
先に結論
携帯電話の契約では、運転免許証やマイナンバーカードなどで本人確認をします。このページは、写しを受け取る側(携帯電話会社・販売代理店・MVNO)に向けて、写しの保管と消す範囲を、携帯電話不正利用防止法・同法施行規則の条文と総務省の資料の言葉で整理します。
- 送られてきた写しは、残すのが決まり:施行規則第 10 条は、本人確認書類の写しが送付されたときなどに、それを本人確認記録と関連付けて「役務提供契約が終了した日から三年間保存するものとする。」と書いています
- 写しを送ってもらう方法は、2026 年 4 月から原則として廃止:総務省の Q&A(令和 8 年 4 月 1 日改訂)は、非対面では原則として IC チップの情報の送信を受ける方法になり、写しの送付を受ける方法は「廃止されます」と書いています
- 店頭でコピーを取る義務はない:同じ Q&A は、写しを取ることについて「法律上の義務はありません。」と答えています
- 消すと書かれているのは番号だけ:総務省の留意事項は、個人番号カードの裏面の個人番号や、被保険者証の記号・番号などを、復元できない程度にマスキングするよう書いています。それ以外の部分(顔写真・住所・本籍など)を消して保管してよいとは、どの資料にも書かれていません
つまり、この業種で写しの一部を消して持つ情報を減らす扱いは、資料に書かれていません。書かれているのは、持ってはいけない番号を、復元できない形で消してから残すことです。個別の扱いに迷うときは、総務省(総合通信基盤局 電気通信事業部 利用環境課)の案内や専門家に確認してください。
マイナンバーカードの写しを本人確認一般でどう扱うかは マイナンバーカードの写しと裏面の個人番号 に、本人確認書類の写しの保管全般は 本人確認書類の写しを受け取る事業者の方へ にまとめています。
法律が求めるもの:本人確認記録と、送られた写しの 3 年の保存
誰が対象か
携帯電話不正利用防止法は、携帯電話会社に契約のときの本人確認を義務付けています。総務省の Q&A(携帯音声通信事業者向け)は、対象の「携帯音声通信事業者」を「MNOやMVNOをいいます。」と説明し、契約の媒介・取次ぎ・代理をする「媒介業者等」について「販売代理店などが該当します。」と書いています。確認を代理店にさせることもでき、その場合、総務省のページは「携帯電話事業者は代理店に関して監督責任を負います。」としています。
一方、同じ Q&A は、SIM カードが入っていない端末(いわゆる白ロム)だけの販売は「法の対象外です。」と答えています。データ通信専用の SIM についても、今の Q&A は「法の対象外です。」と答えています(2027 年に変わる予定です。次の節)。
本人確認記録は契約が終わってから 3 年
法律の第 4 条は、本人確認をしたら本人確認記録を作り、「本人確認記録を、役務提供契約が終了した日から三年間保存しなければならない。」と定めています。記録に書く事項は施行規則第 8 条にあり、本人確認を行った日付・本人特定事項(氏名・住居・生年月日)・確認の方法に加えて、「本人確認に用いた書類又は電子証明書の種類及び記号番号その他の当該書類又は電子証明書を特定するに足りる事項」が入ります。
送られてきた写しも、記録と関連付けて 3 年
施行規則第 10 条は、記録とは別に、確認に使ったものの保存を求めています。総務省のパンフレット(令和 8 年 4 月改訂)の言葉では、「本人確認に用いた書類の写しが送付されたとき、本人確認用画像情報、ICチップに記録された情報、カード代替電磁的記録に記録された情報若しくは登記情報の送信を受けたとき、公表事項を確認したときは、本人確認記録と関連付けて3年間保存する必要があります。」です。
保存の期間が法令で決まっている点が、ほかの業種の写しと大きく違うところです。
2026 年 4 月と 2027 年 4 月の見直し
2026 年 4 月 1 日から:非対面で写しを送ってもらう方法は原則として廃止
総務省の Q&A は、非対面の本人確認について次のように書いています。
「令和7年4月1日に公布した携帯法改正省令により、令和8年4月1日から原則本人確認書類に記録されたICチップの情報の送信を受ける方法となります。それに伴い、本人確認書類の写しの送付を受ける方法や写真付き本人確認書類の画像(厚みその他特徴を含む)の送信を受ける方法については廃止されます。」
e-Gov 法令検索で今の施行規則を見ると、写しの送付を受ける方法(第 3 条第 1 項第 1 号ヌ)は、住民基本台帳法の適用を受けない人と国外転出者に限られています。
ただ、2026 年 4 月より前に送ってもらい、いま保管している写しは残っています。保存の期間は、上のとおり契約が終わった日から数えます。契約が続いているあいだは、その写しも保管が続きます。
2027 年 4 月から:店頭でも IC チップの読み取りが原則に(予定)
e-Gov 法令検索によると、令和 8 年 7 月 27 日に公布された施行規則の改正(令和 8 年総務省令第 94 号)が、令和 9 年(2027 年)4 月 1 日に施行される予定です。改正後の第 3 条第 1 項第 1 号イは、写真と IC チップのある本人確認書類の提示を受けるとともに、IC チップに記録された氏名・住居・生年月日・写真の情報を読み取る方法になっています。
総務省の特殊詐欺等対策サイトも、「令和9年4月以降はICチップの読み取りが原則必須になります。」と案内しています。同じページは、「本人確認書類の写真をアップロード」「本人確認書類のコピーの郵送」などの方法は原則として廃止されること、データ通信専用の SIM も本人確認の対象になることも書いています。
改正後の第 10 条も、写しが送付されたときや IC チップの情報を読み取ったときに、それを本人確認記録と関連付けて 3 年間保存する、としています。見直しのあとも、確認に使ったものを残すという決まりは続きます。
店頭で取るコピーと、写しを記録に使う場合
コピーを取る義務はない。取るなら個人情報の取得
店頭では、本人確認書類の提示を受ける方法が基本です。そのときにコピーを取るかどうかについて、総務省の Q&A はこう答えています。
「本人確認書類が提示された際等に、写しを取ることについて、法律上の義務はありません。なお、写しを取る場合は、個人情報の取得にあたりますので、利用目的の説明など適切な対応が求められます。」(Q&A 3-2)
コピーを取らなければ、番号を消す作業も保管の手間も生まれません。
写しを本人確認記録として使う場合
同じ Q&A は、本人確認書類の写しを本人確認記録として使うことも「可能です。」と答えています(Q&A 9-3)。記録は、法律の第 4 条のとおり契約の終了から 3 年間保存するものです。コピーを記録の代わりにしている店は、そのコピーの番号の扱いを、次の節 のとおりに揃えてください。どの写しが記録に当たるかの判断は、総務省の案内や専門家に確認してください。
消すと書かれているのは番号だけ
個人番号カード:裏面の写しを取らない・届いたら番号を消す
総務省の「本人確認書類として個人番号カード等を用いる際の留意事項等について」(平成 27 年 11 月 11 日更新。総務省の「携帯電話の犯罪利用の防止」のページに今も掲載)は、提示を受けたときは「個人番号を書き写したり、個人番号が記載された個人番号カードの裏面の写しを取らないよう留意する必要があります。」と書いています。
写しの送付を受けるときは表面だけで足りるとしたうえで、裏面が届いてしまったときの扱いも書いています。「当該裏面の部分を復元できないようにして廃棄したり、当該書類の個人番号部分を復元できない程度にマスキングを施した上で、当該写しを確認記録に添付することが必要です。」
保険証・介護保険の被保険者証:記号・番号を消す
総務省の「本人確認書類として医療保険の被保険者証を用いる際の留意事項等について」(令和 2 年 9 月 25 日)は、写しを取るときは「当該写しの被保険者等記号・番号等を復元できない程度にマスキングを施すこと。」と書いています。写しの送付を受けるときは、あらかじめ申込みをする人にマスキングを求めること、マスキングされていない写しを受けたら受けた側でマスキングすることも書いています。
介護保険の被保険者証についても、総務省は令和 8 年 4 月 6 日に同じ趣旨の留意事項を出しています。今の施行規則が本人確認書類に挙げている資格確認書(旧・保険証)の記号・番号の扱いは、保険証の写しの記号・番号はどう隠す? にまとめています。
本人確認記録にも番号そのものを書かない
記録の側にも注意があります。総務省のパンフレットは、「※マイナンバーや基礎年金番号等、法令により書き写すことやコピーを取ることについて制約がある番号については、その番号自体を記録するのではなく、他の情報(発行元機関名や別の識別記号等)を記録するよう注意ください。」と書いています。写しの番号を消しても、記録に書き写していては意味がありません。
それ以外の部分は「書かれていない」
ここまでの資料が消すよう書いているのは、法令で書き写すことやコピーを取ることに制約がある番号です。顔写真・住所・本籍・運転免許証の番号などを消して保管してよい、とは書かれていません。書かれていないことは、してよいという意味ではありません。番号以外を消したいときは、先に総務省や専門家に確認してください。
番号を消すときの失敗と、手順のまとめ
紙と PDF・画像で起きる失敗
紙のコピーをペンで塗ると、塗りが薄くて下の数字が透けることがあります。PDF を画面で扱うときは、注釈や図形で黒い四角を重ねただけだと、文字の層がある PDF なら下の文字がファイルの中に残っています。文字を選んでコピーすると、隠したはずの番号が読めてしまいます。「復元できない程度に」と書かれている以上、見た目が黒いだけでは足りません。
画面で消すなら、下の文字ごと消す(焼き込み)方式を使います。やり方は PDF を黒塗り(墨消し)する正しい方法 に、失敗の型は 黒塗りが「見える」「剥がせる」原因と、渡す前の確かめ方 にまとめています。消したあとの PDF は 剥がしテスト(無料)で、黒い四角の下に文字が残っていないかを調べられます。
Fuseji で番号を消す場合
Fuseji(伏字)は、PDF と画像(PNG・JPEG・HEIC)から個人情報を候補として示し、選んだ部分を下の文字ごと焼き込むアプリです。マイナンバー・保険証の記号・番号・基礎年金番号などを、それぞれの書き方から探して候補に挙げます。QR コードのように文字でない部分は、ページの上でドラッグして範囲を囲めば消せます。書き出した直後に、消した語が残っていないかを自動で確かめます。原本のファイルは上書きしません。
検出は「候補の提示」で、漏れがないことを保証するものではありません。最終的な確認は画面で行ってください。保存が義務の写しは、番号以外を消さないよう、消す範囲を画面で確かめてから書き出してください。
手順のまとめ(受け取る側)
- 案内を直す:個人番号カードは表面だけ、保険証などは記号・番号を隠して出してもらう。「番号が載った面の写しを」と書かない
- 店頭のコピーを見直す:取る義務はない。取るなら利用目的を説明し、番号は書き写さない
- 届いた写しの番号を消す:個人番号カードの裏面は廃棄するか、個人番号を復元できない程度に消してから記録に添付する
- 番号以外は確かめてから:顔写真・住所などを消してよいとは書かれていない。迷ったら総務省や専門家に確認する
- 記録に番号を書かない:発行元の機関名など、ほかの情報で書類を特定する
- 消えたことを確かめる:透けていないか、PDF なら文字を選んでコピーできないかを確かめる
- 3 年を数える:保存は契約が終わった日から 3 年。それまでは消さずに残す
このページは、参考に挙げた法令と総務省の資料の要点を整理したものです。条文や案内は見直されることがあります。個別の手続きでの扱いは、総務省の案内や施行規則の条文を確かめ、専門家に確認してください。価格は 価格 にあります。
参考
- 携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC1000000031
- 同法施行規則(e-Gov 法令検索。令和 9 年 4 月 1 日施行予定の改正を含む):https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000008167
- 総務省「携帯電話の犯罪利用の防止」:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/050526_1.html
- 総務省「携帯電話の犯罪利用の防止|関係資料」:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/050526_1.files/Page377.html
- 総務省「Q&A -携帯音声通信事業者向け-」(令和 8 年 4 月 1 日改訂):https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/050526_1.files/Page444.html
- 総務省・警察庁「携帯電話不正利用防止法パンフレット」(令和 8 年 4 月改訂):https://www.soumu.go.jp/main_content/001090411.pdf
- 総務省「本人確認書類として個人番号カード等を用いる際の留意事項等について」(平成 27 年 11 月 11 日更新):https://www.soumu.go.jp/main_content/000378989.pdf
- 総務省「本人確認書類として医療保険の被保険者証を用いる際の留意事項等について」(令和 2 年 9 月 25 日):https://www.soumu.go.jp/main_content/000708355.pdf
- 総務省「本人確認書類として介護保険の被保険者証を用いる際の留意事項等について」(令和 8 年 4 月 6 日):https://www.soumu.go.jp/main_content/001066960.pdf
- 総務省 特殊詐欺等対策サイト「携帯電話の本人確認ルール」:https://www.soumu.go.jp/tokushusagi/id-check/