住民票の写しを出す前に — マイナンバー・本籍・続柄を載せない取り方と、コピーで消すもの
先に結論
ローンの申込み、勤め先への届け、取引先や手続きの相手への提出。住民票の写しを求められる場面は少なくありません。ところが住民票には、住所と氏名のほかに、マイナンバー(個人番号)や住民票コード、世帯主との続柄など、相手が必要としない項目も載せられます。
- いちばん確実なのは、取るときに載せないこと:住民基本台帳法 第 12 条 第 5 項は、特別の請求がない限り、市町村長はマイナンバーや住民票コードなどの記載を省いた写しを交付できる、としています
- 出す相手に、どの項目が要るかを先に確かめる:個人情報保護委員会の資料は、マイナンバーが必要ない場合は記載されない書類を希望しましょう、と書いています
- 載った写しを取ってしまったら、出す前に消す:同じ資料は、マイナンバーが記載された住民票の写しを金融機関などに出す場合は、その部分をマスキングしましょう、と書いています
このページは、自分や家族の住民票の写しを人に出す場面に絞った説明です。登記で原本を返してもらう(原本還付)ときのコピーの扱いは 相続の書類の控え・コピーを他の相続人や登記所に出すとき に、マイナンバーが載った書類全般は マイナンバーが載った PDF を社外に渡す前に にまとめています。
住民票に載っていること
住民票に何を記載するかは、住民基本台帳法 第 7 条が決めています。日本の国籍を持つ人の住民票について、条文が挙げる項目を順に並べると次のとおりです。
- 氏名・氏名の振り仮名・出生の年月日・男女の別(第 1 号〜第 3 号)
- 世帯主である旨、または世帯主の氏名と世帯主との続柄(第 4 号)
- 戸籍の表示(第 5 号)
- 住民となった年月日・住所・前の住所など(第 6 号〜第 8 号)
- 個人番号(第 8 号の 2)
- 選挙人名簿への登録、国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険・国民年金の被保険者の資格、児童手当の受給資格に関する事項など(第 9 号〜第 12 号)
- 住民票コード(第 13 号)と、政令で定める事項(第 14 号)
つまり、何も選ばずに取った写しに、住所の証明とは関係のない番号や家族の情報が載ることがあります。外国籍の人(外国人住民)の住民票には、総務省の説明のとおり、国籍・地域や、在留カードに記載されている在留資格・在留カードの番号なども記載されます。在留カードの写しの扱いは 在留カードのコピーを受け取る・保管するとき にあります。
取るときに省く:法律と総務省の要領
第 12 条 第 5 項:特別の請求がない限り、省いた写しを交付できる
本人や同じ世帯の人が住民票の写しを請求するとき、住民基本台帳法 第 12 条 第 5 項は次のように定めています。
「市町村長は、特別の請求がない限り、第一項に規定する住民票の写しの交付の請求があつたときは、第七条第四号、第五号及び第八号の二から第十四号までに掲げる事項の全部又は一部の記載を省略した同項に規定する住民票の写しを交付することができる。」
上の一覧に当てはめると、世帯主との続柄(第 4 号)・戸籍の表示(第 5 号)・個人番号(第 8 号の 2)から住民票コード・政令で定める事項(第 14 号)までが、省くことのできる項目です。逆にいえば、これらを載せた写しが要るときは、請求のときに「特別の請求」として求める、という組み立てです。
請求書の様式や、どの項目を選べるかの示し方は市区町村ごとに違います。総務省も、住民票の写しの請求に関する手続や案内については、お住まいの市町村へ問い合わせるよう書いています。取る前に、請求書の「マイナンバー」「本籍」「続柄」などの欄を確かめてください。
総務省の事務処理要領:マイナンバーと住民票コードは慎重に
総務省が示す「住民基本台帳事務処理要領」(令和 8 年 6 月 14 日施行の版)は、市町村の窓口の取扱いを書いた文書です。マイナンバーを記載した写しの請求について、番号利用法 第 15 条・第 19 条の規定に触れたうえで、こう書いています。
「これらの規定に抵触するおそれがある場合は、個人番号の記載を省略した住民票の写しを交付することとするとともに本人又は本人と同一の世帯に属する者の請求により、これらの者に対してのみ交付することが適当である。」
住民票コードを記載した写しも、「慎重に取り扱うことが適当であり、本人又は本人と同一の世帯に属する者の請求により、これらの者に対してのみ交付することが適当である。」としています。どちらも、同じ世帯の人以外の代理人からの請求では、代理人に直接渡さず、請求した本人の住所あてに郵便などで送る方法が適当だ、と続けています(マイナンバーについては、15 歳未満の人の法定代理人や成年後見人などの例外も書かれています)。マイナンバーや住民票コードの載った写しは、窓口の側でも特別に扱われている、ということです。
出す相手ごとに、要る項目を確かめる
金融機関:マイナンバーが要らなければ、載せない
個人情報保護委員会の「特定個人情報を取り扱う際の注意ポイント」(令和 6 年 6 月)は、ヒヤリハットの事例として「個人ローンの申込みのため、金融機関から住民票(写)の提出を求められ、マイナンバー(個人番号)の記載された住民票(写)の交付を申し込んでしまった。」を挙げ、次のように書いています。
「マイナンバー(個人番号)が必要ない場合は、マイナンバー(個人番号)が記載されない書類を希望しましょう。市役所等の窓口でマイナンバー(個人番号)の記載の有無をよく確認しましょう。」
ローンに限らず、提出先の案内に「マイナンバーの記載があるもの」と書かれていなければ、まず提出先に確かめ、要らなければ載せない写しを取るのが順番です。
採用の選考:本籍が記載された写しを出させない
応募者に住民票の写しを出してもらう側の注意もあります。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」は、本籍・出生地に関することを把握すると就職差別につながるおそれがあるとし、注として「『戸籍謄(抄)本』や本籍が記載された『住民票(写し)』を提出させることはこれに該当します」と書いています。同じページは、家族に関すること(職業・続柄・健康・病歴など)も、把握すると就職差別につながるおそれのある事項に挙げています。
採用の担当者は、選考の段階で本籍の載った写しを出させないこと、住民票の写しを求めるなら何のために・どの項目が要るのかを決めてから案内することが、原文に沿ったやり方です。応募書類を社内で回すときの考え方は 採用の応募書類を社内で回す前に にあります。
手続きの相手:提出先の案内が先
役所・裁判所・取引先などに出すときは、どの項目が載った写しが要るかを決めるのは提出先です。たとえば家庭裁判所の成年後見の案内には、マイナンバーの記載がない住民票を出すよう書いたものがあります(成年後見の定期報告 を参照)。続柄や戸籍の表示が要る手続きもあるので、省けば足りるとは限りません。迷うときは、提出先の案内を確かめ、提出先に問い合わせてください。
なお、総務省は、配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待などの被害者の方は、申出によって住民票の写し等の交付等を制限できる、と案内しています。住所を相手に知られたくない事情があるときは、お住まいの市区町村に相談してください。訴訟などで書類から住所を消す話は 住所を相手に知られずに訴訟・調停をするとき にまとめています。
載った写しを取ってしまったとき
取り直すか、消してから出す
マイナンバーの載った写しを取ってしまった場合について、個人情報保護委員会の同じ資料は「もしマイナンバー(個人番号)が記載された住民票(写)を受け取ってしまったときに、金融機関等に提出する場合は、マイナンバー(個人番号)部分をマスキングしましょう。」と書いています。
マスキングの程度について、同じ資料は別の事例で、マイナンバーの部分を「復元不可能な程度にマスキング(マジック等で黒塗りしたものをコピーするなど)」してから渡すよう書いています。簡単に剥がれるテープを貼っただけのものを渡していた、という事例も挙げられています。
ただし、消した写しを受け付けるかどうかは提出先が決めます。証明書として出す書類に手を加えることになるので、消したものでよいかを先に提出先に確かめるか、市区町村でマイナンバーの載っていない写しを取り直す方が確実です。
原本を返してもらう手続きでは、原本に手を加えない
登記の申請のように、住民票の写しの原本を返してもらい、コピーを出す手続きもあります。そのときに隠してよいのはコピーの方で、原本そのものを加工すると補正を求められた例がある、と司法書士の事務所が解説しています。詳しくは 相続の書類の記事の「登記に出す書類のコピー」 を見てください。
PDF や画像で出すときの注意
住民票の写しを、スキャンした PDF やスマートフォンで撮った画像で出すこともあります。画面の上で番号を隠すときに起きやすい失敗は 2 つです。
- 黒い四角を重ねただけ:文字の層がある PDF なら、下の文字はファイルの中に残っています。文字を選んでコピーすると、隠したはずの番号が読めてしまいます(黒塗りが「見える」「剥がせる」原因)
- スキャンした PDF の見えない文字の層:スキャンのあとに文字認識をかけた PDF には、画像の下に見えない文字の層があることがあります(スキャンした PDF の黒塗り)
画面で消すなら、下の文字ごと消す(焼き込み)方式を使います。消したあとの PDF は 剥がしテスト(無料)で、黒い四角の下に文字が残っていないかを調べられます。紙のコピーをペンで塗った場合は、塗りが薄くて下の数字が透けていないかを、明るい所で確かめてください。
Fuseji で消す場合
Fuseji(伏字)は、日本語の PDF と画像(PNG・JPEG・HEIC)から氏名・住所・生年月日・マイナンバーなどを候補として示し、選んだ部分を下の文字ごと焼き込むアプリです。12 桁の数字は、マイナンバーの決まり(検査用の数字=チェックデジット)に合うかも見て候補に出します。候補に出ない欄は、ページの上でドラッグして囲めば消せます。同じ原本から、出す相手ごとに消す範囲を変えた写しを別のファイルとして書き出せ、原本のファイルは上書きしません。書き出した直後に、消した語が残っていないかを自動で確かめます。
検出は「候補の提示」で、漏れがないことを保証するものではありません。最終的な確認は画面で行ってください。マイナンバーの消し方の説明は マイナンバーを扱う方へ にあります。
手順のまとめ
出す側(本人)
- 提出先に、要る項目を確かめる:マイナンバー・続柄・戸籍の表示が要るか。書いていなければ尋ねる
- 取るときに選ぶ:市区町村の請求書で、要らない項目を載せない写しを請求する。迷ったら窓口で記載の有無を確かめる
- 受け取ったら見直す:窓口を離れる前に、マイナンバーなどが載っていないかを見る
- 載っていたら:取り直すか、提出先に確かめたうえで、復元できない程度に消してから出す。原本を返してもらう手続きでは原本に手を加えない
- PDF や画像で出すなら:下の文字ごと消し、文字を選んでコピーできないかを確かめる
受け取る側(事業者・担当者)
- 何のために求めるかを決める:住所の確認に使うのか、マイナンバーや続柄まで要るのかを決める
- 案内に書く:「マイナンバーの記載のないもの」など、要らない項目を案内の段階で示す
- 採用の選考では本籍の載った写しを出させない:厚生労働省は、本籍が記載された住民票の写しを提出させることは就職差別につながるおそれがあるとしている
- 載った写しが届いたら:マイナンバーの扱いは マイナンバーが載った PDF を社外に渡す前に と、個人情報保護委員会のガイドラインを確かめる
このページは、参考に挙げた法令と総務省・個人情報保護委員会・厚生労働省の資料の要点を整理したものです。どの項目が載った写しが要るか、消した写しを受け付けるかは提出先が決めます。個別の手続きは、提出先や市区町村の案内を確かめ、専門家に確認してください。価格は 価格 にあります。
参考
- 住民基本台帳法(e-Gov 法令検索)第 7 条・第 12 条:https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081
- 総務省「住民基本台帳等」(住民基本台帳事務処理要領・DV 等支援措置の案内):https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/gaiyou.html
- 総務省「住民基本台帳事務処理要領」(令和 8 年 6 月 14 日施行):https://www.soumu.go.jp/main_content/001094645.pdf
- 総務省「住民票」(外国人住民に係る住民基本台帳制度):https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/zairyu/resident_record.html
- 個人情報保護委員会「特定個人情報を取り扱う際の注意ポイント」(令和 6 年 6 月):https://www.ppc.go.jp/files/pdf/cautionary_points.pdf
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_56780.html